2008年6月27日金曜日

諫早湾のギロチン

 有明海が死んでいる。原因は諫早湾干拓事業による堤防閉め切りである。同海に面する長崎、佐賀、福岡、熊本各県の漁業者ら約2500人が国に堤防の撤去や排水門の開門などを求め訴訟を起こした。その判決が27日、佐賀地裁であった。

 神山隆一裁判長は諫早湾の漁業被害と閉め切りとの因果関係を認め、国に南北排水門の5年間常時開放を命令。中・長期の開門調査をすみやかに実施するよう異例の付言をした。ただし、堤防そのものの撤去については棄却した。

 同事業には約2500億円もの巨費が投じられ3月末に完了したが、税金の無駄遣いもはなはだしい。さらに、環境破壊というおまけまでついた。おろかな政治の見本である。

 この事業に反対をとなえた民主党の菅議員に、地元の自民党議員である松岡議員や江藤議員がかみついていたのを思い出す。「地元のことを知らんやつが、口をはさむんじゃない」と恫喝していたが、その地元の漁民がノーをつきつけたのだ。

 一部の政治家と工事関係者だけが利益をむさぼった事業であったが、口利きをした政治家はふたりとも故人である。誰も責任をとらずに、膨大な借金とあれはてた有明海だけが残った。むなしい。

2008年6月10日火曜日

居酒屋タクシー

 タクシー運転手が、タクシーチケットで帰宅する公務員に車内でビールやつまみを出していたことが問題となっている。いわく、居酒屋タクシーである。

 以前にブログでも書いたが、官僚たちが飲み会が終わったあとに役所に帰るのは、仕事があるためではない。税金を使って、タクシーで自宅まで帰りたいがためである。笑ってしまうのは、大臣たちのコメントである。

「役人は国会答弁などのために残業を強いられている。この現状を打破したい」

 とんでもない。国会答弁はシンクタンクに丸投げである。自分達はいっぱしの批評家になって、政治家と同じ目線でシンクタンクをいじめているだけである。残業を強いられているのは、これらシンクタンクの社員である。

 国民の税金で、毎晩のように、豪勢な料亭で飲み食いしている政治家には、そんな官僚の実態が分かるわけがない。いまや、日本国の借金は国と地方、そして表に出ていない特殊法人の借金を併せると、一千五百兆円と言われている。とてつもない額である。一日の金利支払いだけで五億円である。何もせずに、これだけの金が飛んでいくのだ。

 この話を官僚に話したら、こううそぶいた。「それなら、自分達が浪費している金など、国の借金に比べればはした金だね」と。

2008年6月9日月曜日

SPEEDO社製水着

 これだけ日本新記録ラッシュという明らかな結果が出たのでは、SPEEDO社製水着を解禁せざるをえないだろう。北島にいたっては、不調と伝えられていたにもかかわらず、世界記録まで出してしまった。

 水着がこれだけの差を出すということも驚きである。本来は、何も身につけていないほうが水泳の記録は出ると言われていた。このため、水着の開発はいかに薄く軽い素材を探すかにかかっていた。

 今回のSPEEDO社製の水着「レーザーレーサー」は、この常識を覆したのである。NASAの新素材を利用し、縫い目のない縫合方法を開発した。実は、SPEEDO社はかつてミズノと提携していた。ミズノの協力をえて、SPEEDO社は世界的な水着メーカーに育ったといわれている。しかし、自社での世界戦略をめざしたミズノがその提携を解消したため、SPEEDO社はNASAに助けを求めたのではとされている。

 日本の水着メーカーは何をしていたのかという非難があるが、必ずしも、責められない事情もある。世界水泳連盟の規約に違反すると思われる改良がレーザーレーサーにはあるからだ。例えば、異種の素材を二種以上組み合わせてはいけない。表面にコーティングしてはいけない。浮力が増す素材はいけないなどである。

 ただし、日本企業が英語を正しく理解していなかっただけという指摘もある。とは言っても、ドイツのメーカーであるアディダス社も同様の解釈をしていたというから、規約にあいまいさがあったのは事実なのであろう。

 しかし、この手の戦略的攻防はスポーツの世界にはつきものである。スキージャンプで日本の台頭を危惧した欧州勢が、スキー板の長さを身長で規制するという暴挙に出たことを覚えているだろう。その後、ノルディックスキーで日本選手が活躍することはなくなった。最近では、柔道のルール改正も進んでいるという。

 問題は、このようなルール改正に臨む日本側の対応である。会議に出かけるスポーツ組織の代表は、交渉能力はまったくないうえ、ファーストクラスに乗って、家族同伴で物見遊山で海外に出かけていく。会議では、まともな議論もできず(英語がまったく話せず)、内容も判らずジャパニーズスマイルで改正案に賛成し、日本に帰ってから、その日本語訳を見て驚くという。

 金メダルをとった荒川静香が、その隣にいたスケート連盟の幹部を無視したのを覚えているだろうか。フィギュアスケートに入る金を自分達で山分けして選手には与えていなかったのだ。荒川静香の遠征費は両親が出していたという。衣装もお母さんが夜なべして縫っていたというのだから驚きである。

 今回の事件の背景にも、このような日本のスポーツ界の闇が絡んでいないことを祈るのみである。

2008年6月2日月曜日

日本の医療は大丈夫?

 後期高齢者医療問題が大きな非難を浴びている。「姥捨て山」制度とも言われるこの制度の問題点については多くのマスコミがすでに指摘しているので、あえてこの場で言う必要はないであろう。

 ただ、一方では、日本の健康保険制度がもはや崩壊状態なのも明らかである。なにしろ年間の医療費は30兆円を超えているのだ。国家予算が80兆円の国では異常事態であろう。なんらかの対策を早急にとる必要がある。

 この元凶をつくったのは日本医師会と呼ばれる圧力団体である。多くの議員を団体の利益代弁者として国会に送りこみ、医療行政を牛耳った。その悪業の最たるものは、異常に高い診療報酬である。どんなやぶ医者でも多額の医療費を受け取ることができるシステムをつくった。腕に関係なく高い報酬が得られるとあれば、モラルハザードが起きるのは当然である。しかも、患者に不必要な薬を大量に与えて、多額の医療費を請求し保険制度を崩壊させた。

 そう言えば「医者と見れば泥棒と思え」と言われた時代もあった。それでも、世の親は無理をしてでも子供を医者にしようとやっきになった。裏金、裏口入学、いくら金を使ってもかまわない。子供を医学部に押し込み、医者にさえすれば、すぐに元がとれる。そんな時代があったのだ。裏口入学の相場は5000万円と言われた。

 しかし、そんなバカな事が長く続くわけがない。金は無尽蔵にあるわけではない。結果として、国民の非難を受けて医師会も力を失った。そして、ふと気づいたら、山のようにあった健康保険金は跡形もなく消えてしまった。水がめが多いからと言って、蛇口を開けっ放しにしていたのでは、あっという間に枯れてしまうのは当然である。

 基本に戻ろう。医は仁術である。医者も、そのような人材が求められているのだ。