2008年4月26日土曜日

ODAの闇

 政府開発援助(Official Development Assistance: ODA)とは先進国が発展途上国を支援するために、無償あるいは有償で資金を与える制度である。日本は毎年一兆円程度の血税を投入している。税金の使い道として、国民からもっとも非難の大きいものであり、そのせいか2007年度は減っている。しかし、巨額な無駄であることには変わりがない。

 ODAの問題は、多額の税金を使っているにも関らず、援助を受ける側の国民が日本に感謝していないという点であろう。当たり前である。国民のためになっていないからである。その国の一部の政治家のふところを温め、あるいは、還流して日本の企業、政治家、ブローカーが多額の金をせしめている。いったん、他国がからむと資金のゆくえが不透明になるため、やりたい放題なのである。

 その闇の一端が暴かれたのが、今回のPCI社の不正流用である。これは、社会党の村山首相のときに中国の要求を丸呑みし、日本軍が中国本土に残した化学兵器の処理を日本政府の金で行うと約束したことに端を発する。日本はポツダム宣言を受託し、保有していた武器を中国にすべて明け渡した。その時点で、管理は中国側に移ったはずなのだが、その管理を放置したあげく、処理に困って日本に泣きついてきたのである。

 しかし、処理をするといっても簡単ではない。兵器がどのような状況になっているのかを把握し、さらに、適切な処理方法も考えなければならない。そのためには中国の人民軍の協力が不可欠である。役人が、そんな面倒くさいことをするわけがない。そこで、登場するのがブローカーのPCI社である。もちろん、多額の金が、中国側、日本側のいろいろな人間に渡っていたのであろう。PCI社だけが悪いのではない。

 かつて、日本のODAの評判が悪いということで、ある企業の方と一緒に、水質汚染のはげしい東南アジアに水浄化装置を送ろうと提唱したことがある。しかし、すぐに企業の上層部から待ったがかかった。ODAは利権の巣窟である。それを脅かす一派があれば、どんな手段を使っても排除する連中が大勢いるのだという。本当に闇の世界である。

2008年4月24日木曜日

これって横領?

 トーマスがかつて働いていた研究所での話である。この研究所には、所管官庁から天下りが専務理事となって送られてきた。いずれ、役に立たない人間ばかりであったが、官庁に予算を握られているので、どうしようもない。

 ある専務理事は、海外出張と称して、ファーストクラスと一流ホテルを使い、海外のお友達とゴルフ三昧の旅をしていた。本人は海外視察と称していたが、彼が海外に行ってもなんの意味はない。この手の海外旅行は、天下りが得意とするところである。

 この専務理事、なにを思ったか、研究所の若手と飲み会を持った。そこで、滔々と世間は甘くないという話をしたらしい。専務のおごりだから仕方がないと若手は思って、くだらない話に我慢していたが、なんと、清算の段になって、この専務、今日は割り勘とのたもうた。ただ酒だったらしょうがないとバカな話を聞いていた連中も、ここで頭にきたらしいが、確かにおごるとは言われていない。渋々、みんなが飲み代を払った。

 ところが、こっそり若手が見ていると、この専務は、店から領収書をもらっていたそうだ。そして、後日、若手との懇談と称して研究所にその金を請求したのだ。情けない。ただでさえ給料の安い連中の支払いをピンはねしたのである。

 最近、官僚の不祥事がやまのように報道されている。しかし、その陰で、報道されない不正がいくらあるのだろうか。暗澹たる気持ちにならざるをえない。

2008年4月21日月曜日

タクシー券

 道路特定財源から国土交通省の役人が無尽蔵にタクシー券を使っている問題がクローズアップされている。しかも、同じ帰宅路なのに、日によって2倍以上も請求額が異なるという。

 かつて、ある省庁の役人と飲んだ時「いまは国会中だから役所に帰ります」と言って深夜に霞ヶ関に戻ったのをみて、いたく感心したことを覚えている。やはり、役人は身を粉にしてお国のために働いているのだと思った。普段の発言を聞いて、役人はどうしようもないなと思っていたので、そんな自分を恥じたことがある。

 ところが、この話を、あるシンクタンクの知人にすると、苦々しくこう応えた。「あいつら、仕事のために帰っているのではありませんよ」と。役所で少し休んで、終電がなくなる時間になったらタクシーで帰るのだという。つまり、自宅までタクシー券で帰るために、役所に顔を出すのだという。

 さらに、友人は、驚くべき話をした。キャリア官僚の重要な仕事のひとつは、ばかな大臣のために国会答弁を用意することだと言われている。そのため、国会開会中は、深夜まで役所に待機していると思っていた。ところが、国会答弁は、シンクタンクに丸投げで、彼らは、それをチェックするだけだというのだ。しかも、官僚の思惑で何度も書き換えさせられるので、シンクタンクの職員には身体をこわすものが続出だという。

 確かに、天下り先の公益法人も、省庁から随意契約で受けた業務を3割ほどピンはねして下請けに丸投げしている。国会答弁も同じ構図なのだろう。

2008年4月20日日曜日

大変だろうな

 人の皮膚から万能細胞の合成に成功したことで一躍世の中の脚光を浴びた京都大学の山中教授であるが、相当なプレッシャーだろうなと気の毒に思う。似たようなことを過去に経験しているのでよく分かる。

 世界に誇れる研究成果だということで、政府機関がこぞって予算をつけた。年度途中の異例の措置である。何とか、おこぼれに預かろうとする連中も擦り寄ってきて、いっきに巨大な組織を束ねることになった。

 いままでは、気心の知れた仲間で研究を進めることができたが、これからは有象無象の野心のかたまりのような連中とも伍していかなければならない。当然、足を引っ張るもの、抜け駆けするものも出てくる。

 さらにプレッシャーをかけるのは金を出した役人たちである。彼らは気が短い。多額の予算をつけたならば、翌日には成果が出ると思い込んでいる。しかし、研究環境を整備するだけで一年はかかる。それから研究にかかるのだ。本当の成果が出るのは、その先である。ところが、毎日のように「先生成果がでましたか」と聞いてくる。

 今回の研究が厳しいのは、不治の病に苦しんでいる患者や家族に希望を与えたことである。治療に利用するには、まだまだ数多くのハードルがある。近日中に成果が出なければ、バッシングに会う虞れもある。

 山中教授は、臨床医師であった。難病に苦しむ患者をみて、それを直したいという思いで、研究の道に進んだという。そんないい人をつぶしてはならない。健闘を祈るのみである。

2008年4月6日日曜日

ねじれ国会

 マスコミの論調によると、参院で民主党が勝利したために、国会運営がねじれ、行政が停滞しているのだという。また、暫定税率の延長が認められなかったために、地方の道路工事が止まり、福祉にも影響が出ていると伝えている。

 しかし、参院で野党が過半数をとったおかげで、いままで闇に閉ざされていた部分が表に出てきたのではないか。いかに社会保険庁がひどい役所であり、年金行政がでたらめであったことも明らかになった。与党は150年安心できる年金制度と豪語していたのである。

 道路特定財源も同様である。本来、道路に使うべき金を天下り組織に垂れ流してきた。そして、その組織を還流して道路族と呼ばれる政治家にも金が渡っていた。自民党が勝利していたら、今後、10年間税金が食われ続けていただろう。

 いまの大きな期待は、200兆円という巨額の特定財源が何に使われているかを明らかにすることである。その金を有効に使えば、日本の社会が変わる可能性もある。

2008年4月1日火曜日

国歌斉唱

 トーマスがアメリカの高校に通っていた頃の話である。その高校は公立だったので、いろいろな人種、いろいろな成績の生徒が通ってきていた。必修科目が国語、社会、体育ぐらいだったので、バイトに明け暮れるものも多かった。不良グループもいて、あまり環境がよいとは言えなかったと思う。(危険ではなかったが)
 しかし、その高校でひとつ感心したことがある。朝の国家斉唱である。全員が起立し、国旗に向かって居住まいを正し、国家 (national anthem) を斉唱するのである。面白いのは、不良グループに属している連中も、かぶっていた帽子を脱いで、胸にいだき直立の姿勢で国歌を斉唱する。毎朝である。
 アメリカは多民族国家であり、国をまとめるためには愛国心を植えつけるのが重要なのだという。その一環として、国旗と国歌に敬意を払うことを小さい頃から刷り込まれるらしい。
 自国を愛する。それが基本ではないか。今春の卒業式で「君が代」斉唱時に起立しなかったり、退席した都の教員が20人もいたらしい。教師に同調する生徒もいたという。
 確かに「君が代」を国歌とすることには議論があろう。しかし、だからと言って、多くのひとが国家斉唱する時に、それを拒否し、あまつさえ生徒にも、それをすすめる。これが教育だろうか。