2009年12月5日土曜日

借金返済の究極の手

 北朝鮮のデノミには驚いた。しかも、新旧紙幣の交換率や上限を考えると、貯金している国民は大損することになる。独裁政治ならではの奥の手であるが、よく暴動が起きないものだと感心してしまう。

 1000兆円を超える借金を抱える日本も、笑ってばかりもいられない。返済のめどがまったく立っていないからだ。もちろん、法治国家の日本では、北朝鮮と同じ手は使えない。暴動が起きるだろうし、国際的信用を失うだろう。

 最近、話題に上るのが政府紙幣の発行である。なにしろ、紙幣をつくるにはほとんど金がかからない。それを大量に刷って、借金返済にあてようというわけである。もちろん、貨幣価値が下がり、インフレの原因となる。しかし、デフレの今なら構わないという意見が強い。確かに、最も安易かつ手っ取り早い解決策であろう。

 しかし、少し考えれば、これは禁じ手であることは明らかである。借金を抱えている人間にはいいが、貯蓄や年金で暮らそうという人たちには痛手となる。場合によっては、ハイパーインフレを招く。何より、国際的信用を完全に失ってしまう。

 緊急対策的に、限度額を決めればよいという意見もあるが、一種の麻薬である。事業仕分けに対する反発をみれば分かる。金はいくらでも欲しい。節約しなくて済むとなったら、打出の小槌と思うのは必至である。

2009年11月30日月曜日

ドバイショック

 ついに噂されていた心配事が現実のものとなった。ドバイの金融破たんである。サブプライムローン問題から、中東の国にも、いずれ金融問題は降りかかると言われていた。それが現実のものとなったのである。

 その結果、なぜか円が急騰している。収入が40兆円に満たない国にも関わらず、90兆円を越すような予算を組んでいるのが日本である。そんな国に信用があるわけがない。それにも関わらず、円が急騰しているのは、ユーロやドルがドバイに多額の投資をしていたからである。

 とは言っても、日本経済も中東にかなり依存している。円だけが高騰しているのは、何か解せない。国際マーケットで何が起こっているか。それを見極める必要がある。それにつけてもグローバルな視点で物事を判断することが、いかに大切かが今回の事件で分かる。日本の現状を見ただけでは、円の高騰は説明できない。

2009年11月28日土曜日

世界二ではなぜだめなのか

 スーパーコンピュータ予算が事業仕分けで見送りとなったことで大騒ぎとなっている。歴代のノーベル賞受賞者も仕分けを批判している。そこで、話題になったことが世界一を目指すことの意義であろう。蓮舫議員の「なぜ世界二ではいけないのか」という質問が、科学者の逆鱗に触れたのかもしれない。

 科学者の一致した意見は、科学の世界では世界一を目指すことに意義があるということである。しかし、これは、世界一という言葉の解釈にも問題がある。科学の世界では、世界一ではなく、世界初が意義があるとされている。新しい原理、新しい理論、新しい材料など、誰が最初に発見したかが、科学の世界ではすべてとなる。栄誉は、すべて、この世界初の科学者に与えられ、二番手にはいっさいの栄誉は与えられない。

 ところが、仕分け作業で注目されている世界一は、コンピュータの演算速度である。その計算速度を競うことに、どれだけの科学的意義があるのだろうか。世界一になっても、すぐに追い抜かれる。

 ましてや、コンピュータは、そのままでは、ただの箱であり、そこにソフトが加わってはじめて意味が出る。コンピュータに何をやらせるかが大事であり、計算が速いだけではあまり意味がないのである。

 蓮舫議員が聞きたかったのは、この問題であろう。ところが、多くの科学者は世界二に敏感に反応した。面白いことに、日本のグループが3800万円の予算で日本一演算速度が速いコンピュータを開発したというニュースが流れた。計算を速くするだけなら、市販のパソコンを並列につなげるだけで十分なのである。1000億円の金をつぎ込む必要などない。

 むしろ、予算カットで問題になるのは、若手研究者の雇用の問題であろう。文科省の失政で、フリーターの博士が異常に増えている。その雇用をいかに確保するかが課題となっている。科学予算が削られると、これら雇用が守られなくなる。それこそ、多額の予算を投資して育ててきた日本の頭脳が、ムダになる。それこそが問題であろう。

2009年11月21日土曜日

おねだり科学者集団

 いろいろな所で報道されているので、ご存知の方も多いと思うが、ここでは毎日新聞の記事を引用してみよう。

 行政刷新会議の事業仕分けで、「来年度予算は見送りを含む削減」を断じられた「次世代スーパーコンピュータ開発」について、大学教授らで組織された「計算基礎科学コンソーシアム」(代表=宇川彰・筑波大学副学長)はこのほど、同開発を「迅速かつ着実に推進することが極めて重要でここに強く訴える」などと、開発継続を求める緊急声明を発表した。

 同開発で事業仕分けが出した結論に対し、「見送りに限りなく近い縮減。今回の唐突な結論は、我が国の科学技術の進歩を著しく阻害し国益を大きく損なう」と、不適切な判断だと批判している。

 同コンソーシアムは「スパコンは、現代の科学技術全体において主要な位置を占めている」としたうえで、「国民生活につながる最先端の技術開発では、スパコンを使ったシミュレーションが、国際競争力における主要な武器になっている」と、同開発が基礎科学の研究の遅延など、影響は大きいと訴えている。

 ブログでも書いたが、いまのスーパーコンピュータ開発には問題が多すぎる。その証拠に、内容に詳しい計算機科学の第一人者である金田康正・東京大学教授が、仕分け人として、スパコン予算削減に賛成する立場に回った。理由のひとつは、同開発に関係するスパコン御三家のうち、NECと日立製作所が撤退したこともある。

 日本が世界一の演算速度を誇ったのはNECの地球シミュレータである。その企業が撤退した背景を推して知るべきであろう。神戸に大きな箱物をつくり、巨額の無駄金をつぎ込む。1500億円あれば、もっと建設的な科学振興策はとれるはずである。 

 これだけの巨費が投じられれば、当然、利権が生じる。そのオコボレに預かれると思っていた科学者は、科学技術立国を錦の御旗にして利権を守ろうとする。ダム建設に寄生虫のように群がる連中と変わりはない。

2009年11月15日日曜日

国立女性教育会館

 事業仕分けで、民主党の蓮舫議員と言い合いになってテレビで繰り返し放映され有名になったのが、国立女性教育会館である。女性教育の振興を図り、男女共同参画社会の形成に資することを目的として設立された組織とある。

 蓮舫議員に対し、理事長の神田道子氏は、「なぜいま女性教育なのか」を説明させてほしいと訴えていた。しかし、時間は限られている。それに、女性教育の必要性を否定するひとはいないだろう。この組織の問題は、そのために巨大な箱物を建設しているという点である。女性教育は、箱物に巨額の予算をつぎこむよりは、より実質的なものに使ったほうがはるかに効率的である。

 この組織は埼玉県に位置し、テニスコートやプールに宿泊施設まである。こんな設備が女性教育に必要なのかと、以前から問題視されていた。女性研究者からも、不必要な箱物と指摘する声が多かった組織である。

 しかも、蓮舫議員が指摘したように、立派な宿泊施設を持っているが、稼働率が低いうえ、女性教育のための機関といいながら、一般にも格安の宿泊料で提供している。ただし、場所が不便なうえに、宿に使えると表立って宣伝もできないため、結局、赤字の垂れ流しとなっている。

 真の男女共同参画や女性教育をめざすならば、箱物ではなく、より教育を実質化する事業に投資すべきである。あの場に引きずり出された理事長に責任はないが、文科省として発想の転換が必要であろう。

スーパーコンピュータ

 政府の事業仕分けチームが、理化学研究所の世界一の演算速度を目指したスーパーコンピュータ開発を事実上ムダと位置づけたことが大騒ぎとなっている。日本の科学技術が大きな遅れをとると危惧する声もある。所長の野依氏も怒っていると報道されている。

 ただし、世界一はやいコンピュータができなければ日本が世界に遅れをとるという心配は、まったく意味がない。いま、世界一の座を獲得しているのはアメリカであるが、それ以外のヨーロッパやアジアの国の科学技術が遅れをとっているかと問えば明らかであろう。
むしろ、アジア圏など元気がある。

 それに、日本の威信というが、世界一の座を誇っていたのはNECの地球シミュレータであり、オールジャパンの技術ではない。それを、理化学研究所という国の機関に1000億円以上の予算をつけて開発させるということ自体、胡散臭い。だまって、NECにやらせればいいのである。

 役人が口を出したとたんに頓挫するというのが、多くの事業である。スーパーコンピュータ開発も同様である。理化学研究所が音頭をとって、NEC、日立、富士通の合同チームで開発するというのは聞こえはいいが、実は呉越同舟である。

 コンピュータ開発では、それぞれの企業がノウハウを持っている。NECはベクトル方式、富士通はスカラー方式という方法を採用している。今回は、これら水と油の関係にあるものをごっちゃまぜにして、言葉では「世界初のハイブリッド方式」などと呼んでいるが、明らかに役人の発想である。

 しかも、企業を巨大プロジェクトの責任者に据えておけば、開発費が足りなくなったら、自腹を切ってでも開発をやりとげるはずという魂胆もみえみえである。結局、NECと日立は撤退することを決めた。

 さらに、NECが世界一はやいコンピュータを開発したからと言って、みんながスーパーコンピュータをNECに発注するわけではない。プロジェクトごとに異なり、東大は日立製を使っている。世界一にならなくとも、演算処理にさほど支障はないのである。したがって、科学技術が遅れるというのは役人言葉でしかない。それにだまされたマスコミがはやしたてているだけである。

 次世代スーパーコンピュータ開発には、すでに巨額の予算が投じられているが、理化学研究所に巨額の予算を渡すという文部科学省の失策のために、めどが立っていない。ダムなどの公共工事と構図は同じなのである。

2009年11月14日土曜日

再生可能エネルギー

 再生可能エネルギーは英語のrenewable energyの和訳である。しかし、再生可能という言葉は少しニュアンスが違うような気がする。自然に再生される資源をエネルギー源として使うという意味であるが、果たしてそうだろうか。

 再生可能エネルギーの反対語は枯渇性エネルギーで、石油、石炭などの化石エネルギーのように資源として限られたものを指す。その対義語として再生可能エネルギーがあると考えたほうが分かりやすいかもしれない。

 人類は古くから再生可能エネルギーを利用してきている。オランダで有名な風車や、日本でもなじみの水車などが、それにあたる。電気が通っていない山奥では、小型風力発電で電源をとっていた。「北の国から」で主人公の純が裸電球を灯して感激した瞬間を覚えているひとも多いだろう。

 しかし、エネルギーは大量かついっきにつくったほうが効率的である。このため、世界各所で大型発電所が建設された。最初は、水力発電が主流であったが、それが火力、原子力へと変わっていった。そして、電力網も整備され、われわれは、その恩恵に預かっている。

 ところで、水力発電は、再生可能エネルギーのひとつと言われているのに、なぜ、枯渇性エネルギーの火力発電や原子力発電へと変わったのだろうか。その理由のひとつは、ダムは使っているうちに土砂で埋まってしまい、発電能力が低下することである。巨額の費用で建設しても、それが使えなくなるのでは、費用対効果が低くなる。

 いま、再生可能エネルギーとしてもてはやされている風力についても、この点を検討する必要がある。その建設には巨額の予算が使われるが、台風で破壊され放置された無残な姿を見たことがある。時々刻々と変わる風の向きや強さに対応するのは難しいし、発電機そのものの寿命も必ずやってくる。
エネルギー問題については、長期的な視野にたった対応が重要である。

2009年11月11日水曜日

オープンキャンパス

 いまや日本の大学ではオープンキャンパス花盛りである。大学を受験生や親に公開することで、その良さを知ってもらおうということであろう。しかし、キャンパスによっては逆効果になるので、大学がすべてのキャンパスを見せているわけではない。

 このため入ってみたら、環境が全然違っていた。こんなきたないとは思っていなかったというような不満の声も学生から聞こえる。大学だけではない。企業も似たようなところがある。いずれ、宣伝文句はすべて鵜呑みにしてはいけないということだろう。

 ところで、オープンキャンパスという言葉は英語ではない。完全な和製英語である。誰が最初に使い出したのか分からないが、学問を教える大学が、率先して間違った英語を使うのはどうかという意見もある。あえて英語にすれば、campus open to publicが正しいだろう。

 最近、海外サイトを見ていたらOpen campusというのがヒットして驚いた。どうやら、新しい形式の大学で、大学に通わずに海外のひとでも学位をとれるものらしい。いわば、通信教育である。日本にも放送大学やデジタルハリウッド大学などが相当するのだろうか。

 いずれ、オープンキャンパスと堂々と間違った英語を標榜するのは、やはり大学としては慎むべきかもしれない。もともとオープンキャンパスという制度は日本にしかないので、和製英語でいいじゃないかという確信犯もいるが。

2009年11月10日火曜日

事業仕分け

 行政刷新会議が予算の無駄を洗い出す作業を「事業仕分け」と呼んでいる。いまいちピンとこない表現である。いままで聖域とされてきた「思いやり予算」やODAにも手をつけると意気込んでいるが、もともと概算要求は95兆円にも達する。事業仕分けでたった3兆円削ったぐらいでは、なんの足しにもならない。

 そもそも、ある事業だけに無駄があるのではなく、すべての事業に無駄がある。それを認識する必要がある。仕分けてしまったら、いままで無駄を放置してきた事業は、そのまま生き残ることになる。

 もちろんマンパワーが足りないことはよく分かる。であれば、民主党は、発想を変えて、マスコミや一般人を利用することを考えたほうがよい。すでに、多くの無駄は報道ずみである。それを変えるだけで大変な節約になる。

 もうひとつは、内部告発であろう。匿名で無駄撲滅キャンペーンをはり、公益法人の職員から意見を聞けばよい。実は、彼らは安い給料でこき使われている場合が多い。その上前をはねている連中が天下りである。腰掛けで数年いて、巨額の退職金をせしめていく。その実情を知っているのは現場の職員たちだ。

 前にも紹介したが、ある公益法人で暇をもてあました天下りの常務理事が午後にこっそり職場を抜け出しパチンコをしていた。これを告発した嘱託職員の女性が解雇されてしまったことがある。民主党政権になったら、こんな暴挙を許さない。その信念が必要である。

 ただし、職場に出てくるだけまして、いっさい顔を出さずに給料だけもらっている天下りも多いので、こちらを辞めさせるのが優先事項かもしれない。

2009年11月9日月曜日

オール電化

 電力会社が推進している施策でよく分からないものにオール電化がある。消費者にはガスを使うのに比べて、基本料金が一本化できるうえ、トータルの光熱費も安くなるというメリットを訴えたり、あるいは、夜間電力を使ってお湯を沸かすのでエコだと宣伝しているようだ。

 しかし、ガスは直接熱エネルギーに変換しているのに対し、電気は石油や原子力によって熱エネルギーを経由して電気エネルギーに変換されている。エネルギー効率という点では、あまりエコとはいえないのである。お湯を電気で沸かすときにかかる時間を思い出してほしい。

 電力会社は、電気使用量が最も高くなるピーク(季節と時間)に合わせて電力設備を整備している。電気の発電量は簡単には調整できないので、ピーク以外のときは、余剰電力を垂れ流していることになる。オール電化などにしたら、ピークの電気使用量は、いまよりも確実に大きくなるはずである。この点を考えれば、電力会社にとってもメリットがあるとは思えない。

 つぎに、エネルギーセキュリティの問題がある。ひとつのエネルギー源に頼っていると、それが絶たれたときのダメージは計り知れない。台風や地震などの災害後の復旧は電気がはやいというが、かつて、送電線が運搬船に切られて、東京の下町全体がゴーストタウンになったことを覚えているであろうか。復旧にも相当の時間を要した。

 エネルギー源は、できるだけ複数にし、かつ分散させて設置するのが懸命である。したがって、オール電化ではなく、ガスや電気、あるいは別のエネルギー源をバランスよく使用するのが賢い方法である。それにしても、なぜオール電化なのだろう。

2009年11月8日日曜日

プルサーマル

 11月5日、九州電力がプルサーマルの試運転を始めたというニュースが流れた。他の電力会社も追随する予定と聞く。これに対し、安全性が十分確認されていないとして、反対派が反発を強めている。

 プルサーマルとは、プルトニウム(plutonium)とサーマルリアクター(thermal reactor)の頭のプルとサーマルを勝手に合成した和製英語である。よって、海外のひとには通じない。さらに、サーマルリアクターとは本来は熱反応器の意味であるが、原子力関係者では軽水炉(light water reactor)のことを指している。

 世界の原子力発電の多くは軽水炉を使用しているので、サーマルリアクターと言えば、軽水炉を指すことになったようだ。軽水とは普通の水のことで、これで原子炉を冷やすとともに中性子を減速させているので軽水炉と呼んでいる。これに対し、重水素(原子量1の水素の同素体で原子量が2と大きい)からなる水を重水と呼び、これで原子炉の冷却と中性子の減速をさせているものを重水炉(heavy water reactor)と呼んでいる。

 原子炉は、ウラン(uranium)を燃料にしている。ウラン(U)には質量数が238と235の2種類があり、U235が核分裂して放射能を出す。普段は、核分裂はゆっくり進むが、中性子をあてると、核分裂が加速される。さらに、この核分裂によって中性子が放出されるので、さらに核分裂が促進される。これを連鎖反応と呼ぶ。これを放置しておけば、反応はいっきに進み大爆発が起きる。これが原子力爆弾の原理である。この中性子を減速させ、ゆっくり反応させることで電力をつくりだしているのが原子力発電である。

 ところで、天然ウランにはU238の方がはるかに多い。U235の含有量はわずか0.72%で1%に満たない。軽水炉では、中性子の減速が大きいので、天然ウランをそのまま燃料にはできず、U235の濃度を高めた濃縮ウランを使っている。一方、重水炉では、中性子の減速が小さいので、天然ウランをそのまま燃料に使えるという利点がある。

 それでは、なぜ重水炉が普及しないかというと、重水が水に含まれる量はわずか0.016%であり、それを取り出すのに手間とコストがかかるからである。結局、軽水を使うほうが簡単で低コストということで、軽水炉が普及しているのである。

 ところで、U235の濃縮には、質量差を利用した遠心分離が使われる。テレビニュースなどで、原子力開発で遠心分離機が話題になるのは、この濃縮する技術があるかどうかが鍵となるからである。

 とこで、天然ウランは資源として限られている。いずれ枯渇するであろう。ここで、登場するのがプルトニウムである。原子力発電でウランを燃やすと、プルトニウムができる。しかも、プルトニウムは核分裂するので、燃料として再利用することができる。それがプルサーマル計画である。

 ただし、この計画に反対する人たちは、濃縮ウランを燃料として設計されている軽水炉にプルトニウムを燃料として使って安全かどうかという点を問題にしている。これに対し、電力各社は安全性に問題はないと主張している。

 原子力発電をエネルギー源として、今後も使い続けるならばプルサーマルは必須の技術となる。ただし、不確定要素もある。いまの生活水準を続けるのか、それとも質素な生活で我慢するのか、結局は、この選択を迫られているのである。

2009年11月7日土曜日

高速道路無料化

 民主党の高速道路無料化に対して非難が集まっている。一度、導入した制度を覆すのはつくづく難しいと思う。

 もともと、高速道路は無料になることが前提で建設されている。世界的に見ても、これだけ高速料金が高いのは日本だけである。おかげで物流コストが高くなり、競争力が失われている。それが民主党の考えだ。しかも、高速道路は国土交通背省の役人の天下りの温床になっており、税金がムダに使われている元凶だ。

 地方では、高速道路はがら空きで、そのそばを通っている国道を、大型トラックが猛スピードで走っている。おかげで、通学路は危険このうえないし、国道はすぐにがたがたとなり、修理代も高くつく。

 高速道路無料化は多くのひとが歓迎すると思っていたら、大反対の嵐である。まず、道路関係者。自分たちの食い扶持がなくなるのだから反対は当たり前であろう。次は、鉄道などの他の輸送機関の関係者。ライバルだから反対は当然かもしれない。

 しかし、驚いたことに、この政策で恩恵を受けるはずのドライバーや運送会社の関係者からも反対の声が聞こえてくる。いわく、交通量が増えてCO2排出量が多くなる。道路が渋滞して配達が遅れるなどなど。もちろん、海外でも交通渋滞が予想される道路では、高速料金を課している。対策はいくらでも打てるはずだ。

 悪い制度であっても一度定着してしまうと、そこに新たな利権が生まれる。それを変えるのは並大抵ではないということであろう。

2009年11月1日日曜日

タバコ税

 民主党がタバコ税の値上げを検討しているという。自民党では、なかなか手をつけられなかった聖域だ。先進国のなかで、これだけ喫煙が自由という国は日本ぐらいであろう。外に食事にいくと、喫煙者が堂々とタバコを吸っている。海外では考えられない。

 なぜ、自民党では難しいかというと、タバコ農家やタバコ販売業者などが自民党の支援団体であったからだ。そのため、自民党の会合では、必ず灰皿が置かれていた。支持者に気を使っているためだ。しかし、いまどき会議でタバコを吸えるというのは、ワンマン企業で社長が喫煙者の会社ぐらいだろう。

 とは言え、会議が禁煙になったのは、ごく最近のことである。そういえば、二年前にNHKの出演者控え室に入ったら、平気で喫煙しているのに閉口したことを覚えている。最近、ようやく分煙にしたようだ。親方日の丸の組織は、おしなべて喫煙に寛容なところが多い。

 日本が喫煙天国になったのは、税金と戦争が原因らしい。まず、タバコ税欲しさにタバコの販売を国直轄の専売製にして税金を掠め取ろうとしたのが最初である。つぎは、第二次世界大戦のときに、軍人への配給品としてタバコを配った。戦意高揚という意味があったようだが、ニコチン中毒患者が肝心の場面では力が出せないというのは証明つきである。

 百害あって一利なしのタバコが、他の先進国なみに規制されるのを期待している。もちろん、喫煙者の自由を奪うつもりは毛頭ない。非喫煙者に間接喫煙をさせないようにして欲しいだけである。

2009年10月31日土曜日

行政刷新会議

 行政刷新会議のメンバーが小沢幹事長の横槍で大幅に変更になった。その理由は実にばかばかしいものであった。政権奪取の悲願を達成した与党民主党にとって、何よりも大事なのは選挙であり、一年生議員にとっての大きな使命はつぎの選挙に勝つことである。そのためには選挙区の引き締めが重要で行政刷新などをしている暇はないということらしい。 

 本末顛倒とはまさにこのことか。国会議員の仕事は、選挙に勝つことではない。国民が民主党に期待したのは、議員として従来の硬直したシステムを変換することである。いままでの議員のように、地元優先で、国の利権を地方に持ってくることが仕事ではない。

 さらに、小沢幹事長は、あんな分厚い資料を渡されても、長年議員をやってきた自分でさえ内容が分からないと言っていた。その先に、ましてや一年生議員などには分かるはずもないと言いたかったのだろうが、一年生議員には、官僚出身者も多く、勘所が見えていたはずだ。まさに適役だったのである。

 長年対立してきた仙石大臣に手柄を横取りされたくなかったという見方もあるが、参院選挙を前にして、予算の大幅カットなどをしたら、地方の反発を受けて、選挙で負けてしまうという懸念もあったと聞く。しかし、これは選挙民をばかにしている。国民もムダ撲滅を期待しているのだ。

 もちろん、地方の首長や議員には、いまだに、国におもねて税金を掠め取ろうと画策する輩が多い。その協力なくてして選挙で戦えないという心配も分かる。しかし、これは、旧い発想であり、民主党は、そんな協力なしに選挙で勝ってきたはずだ。公示前一週間で立候補を決めた候補が選挙で勝ったのが何よりの証拠である。

 このままでは、自民党が民主党という名前に変わっただけで、政治の体質は何も変わらない。

2009年10月29日木曜日

ドラフト会議

 今年もドラフト会議が開かれる。この季節、思い出すのは30年以上も前のドラフトである。当時、高校球児で怪物と呼ばれた江川卓をどこの球団が獲得するかで大騒ぎになっていた。江川は巨人以外であればプロには行かないと宣言し、結果として法政大学に進学した。

 そして、四年後、ふたたびドラフト会議に臨んだ江川は、巨人以外の球団には入らないと公言した。ところが、巨人の単独指名と誰もが思っていたところに、弱小球団の近鉄が一位指名し、さらに交渉権を獲得してしまったのである。

 江川の選択肢は限られている。すでに大学を卒業してしまった。ノンプロに行くか、我慢して近鉄に入団するか。しかし、江川がとった行動は意外なものだった。南カリフォルニア大学への留学を決断したのだ。一年留年して、巨人の指名を待ったのである。

 しかし、江川の情熱は通じなかった。一年後のドラフト会議でなんと阪神が江川との交渉権を獲得したのである。そして、問題のトレード劇が起こる。当時、巨人のエースとして活躍してた小林が、なんと阪神江川と電撃トレードされるのである。

 めでたく、江川は巨人に入団したが、面白くないのは小林である。当時は、エースとして堂々の活躍をしていた。それが、新人の江川を獲得するために、球団から捨てられてしまったのである。

 この後、大卒や社会人には逆指名が許されるようになった。しかし、巨人と江川にはダーティーというイメージがつきまとうことになる。不世出の大投手も、最後は200勝もできずに退団した。

 南カリフォルニア大学のグランドでぶでぶに太った江川を見たとき、これではダメだと思ったが、やはり、高校時代の神がかった投球は、その後、見ることはできなかった。おそらく、スリムだった高校時代の球速がいちばん速かったのではないかと言われている。

 才能あるひとりの選手の運命を翻弄したドラフト会議。いまであったら、もしかしたら、江川は高校卒業直後に大リーグという選択もあったのかもしれない。

2009年10月26日月曜日

電気自動車

 どこの自動車メーカーも電気自動車の開発にやっきになっている。CO2を出さない究極のエコカーがキャッチフレーズとなっているが、ちょっと待てと言いたい。

 実は、20年ほど前にカリフォルニア州が環境への影響を配慮して、車に積む電池の使用を大幅に制限するという噂が流れた。州議会が法案を通そうとしているというのだ。そのため、アメリカのベンチャーと一緒になって、電池に変わるエネルギー貯蔵装置としてフライホイールを検討したことがある。実用には至らなかったが、それだけ車載用電池は問題視されていたのである。

 カリフォルニア州が懸念していたのは、その大量廃棄である。電池はなかなかリサイクルが難しい。(リサイクルするよりも新品を買ったほうがはるかに安いという問題もあるが)車の数を考えれば分かるが、その数は膨大である。勢い、不法投棄の対象となり、大量に野山に捨てられ、環境破壊の元凶となる。しかも車は長持ちしても電池の寿命は短い。1台の自動車で、何個もの電池が捨てられる。もちろん、スクラップになる車にも電池は積まれている。その処理に金がかかる。

 電気自動車ともなれば、巨大な電池を積むことになる。走行距離を稼ごうとすれば、その容量は、莫大なものになるであろう。そんな巨大電池が寿命がくれば数年で捨てられる。もちろんリサイクルという手もあるが、そのコストはばかにならない。それに、クリーンと銘打っても、電池をつくるときに大量のCO2を発生していることを忘れてはならない。

 電気をつくるのにもCO2は発生する。エネルギー効率を考えれば、直接変換がもっとも有利である。ガソリンをそのまま燃料にするというのは決して悪いことではないのだ。電気をつくるときに発生するCO2を考えると、どちらが環境にやさしいかは判断が難しい。

 何年か後に、大量の巨大電池が廃棄され、それを処理会社が自分の手に余ると、孫うけに出す。ピンはねされた孫会社は、不法投棄するしかない。その結果、環境問題を引き起こす。そんなことが起きないことを願っている。

2009年10月25日日曜日

唖然呆然民主党

 行政刷新会議の下で「事業仕分け」を行う作業チームが発足した。来年度予算案の編成で、必要性や効果の低い事業を洗い出すために設けられたものだ。統括する枝野元政策調査会長を含め民主党の国会議員32人がメンバーで、23日から財務省の担当者への聞き取りを行うなど、本格的に作業を始めた。このチームは期待できそうだと思った矢先、期待はもろくも崩れ落ちた。

 この作業が突然ストップしたのだ。理由はばかげたものだった。民主党の山岡国会対策委員長が23日、平野官房長官と会談し、作業チームのメンバーの半数近い14人が衆議院選挙で初当選した議員であることから、「新人議員は党の研修を優先すべきだ」という考えを伝え、平野官房長官も受け入れてしまったのだという。

 このため作業チームは、午後の作業を取りやめ、週明けに予定していた会合を中止するとともに、民主党側の意向を踏まえて新人議員などをメンバーから外し、チームの規模を半分程度に縮小するらしい。

 新人には、若手官僚出身者も多く、予算申請をよく知っているだけに、必要性の少ない予算の割りだしには最適の陣容と思っていた。それを、ばかなふたりに潰されたのである。過去官僚の斉藤氏を日本郵政社長に起用するなど、民主党の迷走が目立っていただけに、行政刷新会議には期待していた。それだけに、落胆も大きい。

特別会計

 「塩じい」の愛称で呼ばれている塩崎正十郎さんが財務相時代に特別会計に苦言を呈して発した有名な比喩がある。「母屋でおかゆをすすっているのに、離れですき焼きを食っている」母屋が一般会計で、離れが特別会計である。

 当時、一般会計が88兆円程度であったが、特別会計は240兆円とも言われた。情報がなかなか出てこないので、予算の総額も分からなかったのだ。官僚の裏の財布とも言われた。自民党の重鎮が特別会計を非難したことで、その改革が進むかと期待したが、期待はずれに終わった。

 実は、特別会計に巣くっている公益法人は山のようにある。存在意味のない法人がほとんどであるが、その予算の組み方はほぼ一緒だ。まず、何人の天下りを受け入れているかが基本となる。そして、一人当たり3000万円程度で計算する。予算の一割程度は法人が自由に使っていいので、天下りひとりの法人は少なくとも3億円の予算がつくことになる。10人のところは30億円である。もちろん、個室、ハイヤー、美人秘書が欲しいとなると、この単価は、もっと跳ね上がる。

 この計算をしたうえで、例えば30億円の業務委託をするには、どんな仕事を与えたらよいかをひねり出すのである。つまり、業務が先にあるのではなく、天下りを食わすために、どれだけの金がかかるかということで計算しているのだ。国が滅びるのは当たり前であろう。

 民主党が政権をとって、特別会計にメスを入れると宣言している。少しは期待したい。いまや国の借金は1000兆円を越すという。年収が40兆円しかない国である。とっくに破産しているのだ。

2009年10月24日土曜日

母子加算

 民主党政権になって、母子加算が復活することがほぼ決まった。苦しい生活を強いられてきた母子家庭にとっては朗報であり、将来の日本を支える子供を大切にするという理念ともマッチした施策である。

 朝のテレビで、母子家庭から喜びの声を報道していた。その中で、ある母親から「小泉だけは恨んでも恨みきれない人間だ」という発言があった。小泉改革によって母子加算が廃止されたという報道を受けてのものだろう。しかし、これには誤解がある。

 小泉さんが訴えていたのは「無駄排除」と「国民の自立」であったと思う。問題は、これをうけてとった官僚の対応である。自分たちの利権に絡む天下り先確保には積極的であったが、自分たちの利益とは無関係の出費を無駄として削ったからである。そのひとつが「母子加算」であった。

 小泉改革に反発していた官僚が画策した姦計とも言える。国民生活に直結する部分を切り捨てれば、当然、反発が起こるのは必至である。自分たちの組織は温存し、大事な予算を切り捨てたのである。そして、結果として「小泉改革は弱者切り捨てである」という誤った考えを国民に植え付けた。

2009年10月23日金曜日

日本郵政社長人事

 日本郵政株式会社の新社長候補の斉藤次郎という名前を見て驚いた。これでは、民主党の支持率は確実に低下するだろう。過去官僚ということだけではない。かつて、小沢一郎と組んで、国民福祉税構想を練った張本人だからである。

 1994年、当時の首相の細川護煕(日本新党)が未明に突然、消費税を3%から7%に上げると発表した。用途は福祉目的だから問題ないという論調である。深夜の記者会見がトレードマークの細川政権だったが、あまりにも唐突かつ突拍子もない発表だったので、大きな反響があった。もちろん大反発である。

 この記者会見で有名になった言葉が「腰だめ」である。細川首相は、記者からの質問の「なぜ7%なのか」に対し「腰だめで決めた」と応えたのである。私も、この回答には卒倒しそうになったことを覚えている。腰だめとは「銃を腰のあたりに当てて、大まかな見当で撃つこと」という意味である。つまり、準備や計画が整わない状態で、物事をはじめるという意味にある。消費税を7%に上げるのが腰だめでは話にならない。

 当時、細川首相の国民的人気は非常に高かった。それまでは、年寄りくさくて、スマートでない政治屋が首相というイメージが強かった。海外に出すのがはずかしいような政治家ばかりだったが、細川さんはマフラーをかっこよく巻いて、海外にもさっそうとデビューした。しかし「腰だめ」発言で、見た目はいいが、頭の中はからっぽということを国民に曝してしまったのである。当然、人気は急落し、退陣に追い込まれた。

 国民福祉税構想の仕掛け人が、当時の大蔵事務次官であった斉藤次郎氏と言われている。首相に「腰だめ」発言を許すような役人ではだめだろう。そんな人間が、復活したと聞いて、ただただ驚くばかりである。

2009年10月22日木曜日

とっくに破綻

 日本政府は、JALをなんとか再建しようとやっきになっている。日本にふたつしかない航空会社であるから、その重要性は言わずもがなである。しかし、JALはまさに親方日の丸の超不良会社である。巨額の赤字を出しても、月50万円の企業年金をOBに払い続けている体質を見ても明らかであろう。普通の会社ならば、経費を切り詰めるのが当たり前である。赤字の要因を垂れ流しながら、いずれ国が助けてくれるだろうとけろっとしている。

 しかし、JALどころではない火の車の国がある。それが日本だ。いまの日本を家計に例えてみよう。借金は一億円ある。年収はたった400万円だ。しかし、この家には放蕩息子や娘がたくさんいて、これを買って、あれも買ってと、なんと出費は950万円に達する。本来ならば、収入の400万円以下に出費を切り詰めて、少しでも借金を返すのが当たり前なのだが、なんと親は「今年はきびしいぞ。だから出費を920万円に減らすから、覚悟しろ」とばかなことを言っている。

 本来ならば、借金が一億円で、年収が400万円しかない人間に、520万円の金を貸すお人よしなどいないだろう。これに対し、ばかな経済評論家は、隠れ資産として一億円以上の貯金があるという。これは、日本国民の貯蓄総額が国の借金より多いということを言っているようだ。しかし、これでは、他人の財布をあてにして、放漫経営をしているばかな経営者と同じである。破綻は目にみえている。

 政権が変わって、日本は再生に向かうかと少し期待していたが、どうやら、日本丸の沈没は防げそうにもない。

2009年10月21日水曜日

西川社長辞任

 ついに、日本郵政の西川社長が辞任した。小泉郵政改革に一貫して反対していた民主党政権になったときから、いずれこうなることは分かっていたが、驚くのはマスコミの論調の変化である。

 かんぽの宿売却をめぐる不透明さを指摘し、西川社長は国民の貴重な財産を食い物にする極悪人であるかのような報道を繰り返していた。社説などでも、貴重な国民財産を取り戻せと主張していた新聞もある。

 しかし、かんぽの宿は、役人が採算を度外視し、とても集客が見込めないような場所にも天下り先確保のために建設したものである。それに、日本郵政がなにもしないまま、かんぽの宿を持っていれば、それだけ損失は膨らんでいく。バルクセールとして、一括売却したのは賢い方法だったのである。

 それを一軒ずつ精査し、こんな安い値段では国民の納得が得られないとマスコミは報道している。しかし、買うほうにしてみれば雇用を確保しろという条件を突きつけられたら、とても大金など出せるものではない。建物だけを買うのであれば、物件によっては、もっと高い値段はつけられただろうが、それでは、辺鄙なところに建てられたかんぽの宿は見向きもされなかったろう。

 ところが、西川社長が辞任となったとたんに、マスコミの論調はころっと変わった。全国一律サービスでは、採算がとれずに税金が投入されるのではないか。ふたたび郵貯の金が無駄な公共事業に使われるのではないか。これで、改革が逆戻りするのではないか。呆れてものが言えない。郵政改革の本質がなんであったかを韜晦し、いたずらに国民に郵政民営化が悪という印象を垂れ流していたのは、マスコミである。

 物事の本質を見つめ、それを正しく報道してくれる健全なマスコミが現れない限り、政権交代が起きても日本は変わらないであろう。

2009年10月19日月曜日

概算要求

 各省庁から上がってきた来年度予算の概算要求総額が95兆円となった。国の税収が40兆円を下回ると言われている中での暴挙としか言いようがない。もちろん、民主党政権では、かなり予算カットが予想されるので、要求だけは多めにしておこうという思いもあるのかもしれない。

 それにしても情けないのは大臣たちだ。野党に居た頃は、無駄だらけの予算の節約などいくらでもできると豪語していたが、いまでは自分の所管官庁の予算だけは減らさぬようにと必死に防御に走っている。

 まともなのは、前原国土交通大臣ぐらいであろうか。次から次と民主党らしさを出している。公共工事も大きく切り込んだ。しかし、周りの大臣がこれだけだらしないのでは、いずれ四面楚歌となって、現政権も自民党政権と変わらない体たらくになるのは目に見えている。

 予算カットで一番効果的な方法は一律にシーリングを課すことである。例えば、各省庁に、前年度の8割の予算を認める。その替り、中身は自分たちで精査しろと言えば済むことだ。削減を自分たちに決めさせる。しかし、民主党は、この手法をとりたくないらしい。ひとつひとつの予算を精査するという。

 予算項目は膨大だ。いちいち精査していたら、いくら時間があっても足りない。それに、利権にからむ圧力団体からの陳情も激しくなる。いままで甘い汁を吸ってきた連中が、その利権が消えそうだとなったら必死になる。非合法な手段も辞さないであろう。結局、官僚組織を変えない限り、政治は変わらないのだろうか。

2009年10月18日日曜日

とんだ間違い

 ある教育関連の国際ワークショップに参加して驚いた。文部科学省の顧問という有名大学の学長を経験した元教授が基調講演をしたのであるが、その英語が間違いだらけだったからだ。

 英語の発音はなかなかなもので、日本人には珍しいと最初は感心していたのであるが、使っているパワーポイントの英語に初歩的な間違いが多いのに、途中から困惑してしまった。文部科学省を代表して発表しているのだから、当然、官僚のチェックが入っていてしかるべきである。あれでは、日本の恥をさらしているようなものだ。

 なかでも困惑したのが、キャリア形成という英語である。carrier developmentと誤った英語がスライドに堂々と書かれているのである。それも、何度も講演に登場する。キーワードのひとつなのだから、当然チェックが入っていなければならないのに、どうしたのだろうか。ご本人は自信を持って話しているので、よけい始末が悪い。

 英語のcareer(経歴)をキャリアと発音し、carrierという表記をあててしまう日本人が多いのは事実である。careerの発音は韓国の英語名Koreaと同じで、発音は「クリア」である。carrierには「運搬人」という意味もあるが、「保菌者」という意味で使われることが多く、あまりイメージがよくない。実は、エイズ感染者のことをAIDS carrierと呼ぶ。

 それを同席者に確認したら、「役人は知っていて、わざと教えていないのではないか」と笑っていた。気に入らない人間がいると、役人は意識的に恥をかかせようとするのだそうだ。本当だろうか。いずれ、日本の文部科学省のレベルが低いと思われたことだけは確かである。

健康保険制度の破綻

 後期高齢者医療制度が廃止されることになった。75歳以上の老人にも医療負担を求めるもので、「姥捨て山制度」とか「老人切り捨て制度」などと非難された。年金制度にひずみがあり、社会保険庁が数々の不正を行っていたにもかかわらず、虎の子の年金から保険料を天引きするというやり方にも非難が集まった。

 もちろん、この制度には数多くの問題があり、是正すべき点も多いのは確かである。しかし、一方で、待ったなしでやってくる健康保険制度の崩壊がその背景にあることを忘れてはならない。高齢者に使われる保険料は年12兆円に達する。今後も増加の一途をたどるであろう。国の年収が40兆円しかない国で、この額は異常ではないだろうか。

 先日、個人病院に行く機会があった。そこで、驚いたのは、待合室にいる高齢者の多さである。確かに、高齢になれば健康に不安が出てくる。医者に相談したくなるのも道理であろう。しかし、驚いたのは、受け取っていく薬の多さである。いまは薬局で受け取るのが普通であるが、この病院では窓口で手渡していたので目にとまった。

 ある女性は、窓口であふれんばかりの薬をうけとったあとで、不満を口にしていた。いつももらっている薬が入っていないというのである。おそらく、病院は必要ないと判断したのだろう。少々のやりとりがあったが、病院も説得をあきらめたようだ。それから、10分ほどして、もうひとつの薬の山を受け取ると、彼女は満足そうに帰っていった。

 これでは、保険金が枯渇するのは必至であろう。すでに9割以上の健康保険組合が赤字に転落している。厚生労働省の役人の多くが製薬会社に天下りし、利権を死守しようとしていると聞く。健康保険制度に対し、抜本的な対策を講じない限り、日本の国そのものが崩壊することを忘れてはならない。

2009年10月15日木曜日

ハブ空港

 前原大臣に殺人予告があったと聞いて、ダム利権がらみかと心配したが、単なるいたずらだったようだ。民主党では、かつて裏社会の利権に手を入れようとした議員が殺害された歴史がある。このブログを見たからではないだろうが、驚いたことに週刊ポストが、ダム利権の闇の一端を暴きだしている。どこまで明らかにできるか疑問もあるが、期待して注視している。

 ところで、前原大臣はまた大胆な発言をして、注目を浴びている。羽田空港のハブ化である。いまや、東アジア地区のハブはソウルの仁川空港に完全に制圧されそうな勢いである。成田空港をないがしろにしているという批判もあるが、成田では国内空港へのアクセスが悪すぎ、ハブとはなりえない。その証拠に、多くの国内空港は成田ではなく仁川に飛んでいる。

 さらに、成田では滑走路の数が少なくて、輸送量も貧弱である。東京からの交通も不便だ。海外から来たひとが、必ず不満を口にするのが成田の不便さである。トーマスも、海外出張で羽田を使ったが、その便利さに感激した。これだけの大都市の表玄関が成田では恥ずかしすぎるし、観光という観点でも日本の競争力が保てないであろう。羽田空港のハブ化、大賛成である。

2009年10月14日水曜日

天下りの抜け道

 民主党政権になって天下りが一応全面禁止とされている。しかし、抜け道をいくらでも考えるのが役人である。考え出したひとつの方法が出向である。つまり、公務員の職に留まったまま、独立行政法人や財団法人に出向するのだ。実は、この方法は、若手官僚がずっとやってきたことだが、それを年寄り官僚にも適用しようという姑息な手段である。

 出向がおいしいのは、給与は出向先の規程に準じるからである。例えば、係長クラスの若い役人が出向しても、その先では課長や部長になる。驚くことに給料は、出向先の部長給与になるのだ。公務員は薄給だといいながら、出向先でハイヤーに乗り、接待費は使い放題、しかも、給料は破格である。
 
 天下りがだめなら、本来退職する役人を出向させよう。それが役人が考え出した民主党対策のようだ。しかも、この方式ならおいしい給与をもらったうえ、定年まで勤め上げられる。高い退職金をせしめることもできる。世の中には、天下りだけのための法人がごまんとある。出向先には困らない。

 結局、天下りは禁止になっても、税金の無駄遣いはなくならないという構図だ。石川五右衛門の辞世の句を思い出す。「石川や 浜の真砂は 尽きるとも 世に盗人の 種は尽きまじ」

石川遼

 世界的に名誉のあるゴルフのプレジデンツ杯に、18歳の石川プロが選出され、大活躍した。ただただ驚きである。この大会は、アメリカ代表プロ選手と、インターナショナル選別メンバーが対抗戦をするもので、アメリカ代表には、あのタイガーウッズも入っている。石川プロは、インターナショナルチームで、唯一人3勝(2敗)を挙げたのである。

 インターナショナルチームのキャプテンのグレッグノーマンの推薦という。ノーマンと言えば、ある出来事を思い出す。以前、同組でプレーしていた日本人有名プレーヤーに注意をしたのだ。その選手はラフに入ったボールのまわりの草をゴルフクラブでつぶしていたのである。実は、それまでにも国際ルールでは認められない行為を、この選手は繰り返していた。見かねたノーマンが注意したのである。

 日本のプロゴルファーはよく内弁慶と言われている。国内トーナメントでは勝てるが、海外ではさっぱりだからだ。

 これには理由がある。国内トーナメントでは、プレーに取り巻きファンがついてまわる。このファンがルール違反をするのだ。例えば、ひいきの選手がラフにいれたボールをフェアウェーに蹴り入れたり、ひどい場合には、OBに入ったボールを杭の内側に移動させる。選手も、平気でラフに入ったボールが打ちやすいように草を抜いたりする。こんな甘やかされた環境にいたのでは、ルールに厳しい海外で勝てるわけがない。ただし、国内トーナメントもようやく国際標準に近づいている。海外で活躍できるプロも出てくるのでは期待している。

 後の問題は、喫煙であろう。テレビ中継で、日本人トッププロが、よくタバコを吸いながらプレーしている様子が映し出される。ゴルフは緊張した場面で、微妙なタッチが要求される。タバコを吸ったのでは、手先の毛細血管が酸素不足になる。ミスショットが出るのは当たり前である。まわりのプロに誘われるであろうが、石川プロには、成人になっても喫煙には手を出さないでほしい。それが世界のトッププレーヤーになる要件のひとつである。

2009年10月12日月曜日

地球温暖化

 地球温暖化が世界的な問題としてクローズアップされている。その元凶として二酸化炭素(CO2)に焦点があてられ、その排出量を規制しようという動きがある。新政権の鳩山首相が1990年比で25%削減を約束したことで、賛否両論が渦巻いている。

 しかし、地球温暖化の本質をどれだけ多くのひとが理解して議論しているだろうか。実は、専門家でさえも、その本質を見抜くのは非常に難しい。なぜなら、地球規模で起きている現象の検証実験ができないからである。

 根本的な問題を、まず整理してみよう。地球には太陽エネルギーが降り注いでいる。そのおかげで、温暖な地球環境が保たれる。その平均温度がH2Oという物質が液体(水)として存在しうる範囲に保たれ、その結果、多様な生物群が存在しているのである。これは、ある意味、奇跡というしかない。

 ところで、太陽エネルギーを地球が受けるだけならば、その温度はあっという間に上昇し、灼熱地獄になるであろう。しかし、地球は太陽から受け取った熱エネルギーを、うまく宇宙に放出することでバランスを保っている。

 二酸化炭素は、熱エネルギーに相当する電磁波(赤外線)を自身に貯め込むという性質がある。科学的に言えば、赤外線を吸収できる分子構造になっている。そのため、宇宙に放出されるべき熱エネルギーが地球に留まる。これが、地球温暖化の原因である(と言われている)。

 しかし、ここにひとつ問題がある。赤外線の吸収スペクトルを調べると、二酸化炭素よりも水蒸気のほうが、はるかに赤外線を吸収することが分かっているのである。つまり、水蒸気はCO2よりも強烈な温暖効果ガスなのである。

 現在の報告では、水蒸気による温暖化の見積もりは難しいという理由で、その影響をまったく無視してCO2にだけ焦点があてられている。いわば、さんざん砂糖で甘くした水に、少し果汁を加えたら甘くなるかどうかを議論しているようなものなのである。本当に科学的な議論をするならば、この事実を忘れてはならないであろう。

2009年10月11日日曜日

越前クラゲ

 越前クラゲが大繁殖し、日本海岸だけではなく太平洋岸の漁獲にも大変な悪影響を与えている。どうして、こんなに繁殖したのだろうか。実は、その発祥地は東シナ海と言われている。

 東シナ海の心臓部にあるのが渤海湾である。航空写真を見ると明らかであるが、この湾の汚染が急速に進んでいるのである。写真には毒々しく変色した海が見える。中国本土の河川汚染が海に流れ込み、海外が富栄養化しているのである。その結果、クラゲが大繁殖しているらしいのだ。

 中国の経済発展はすざましい。当然、大量の水を使用する。残念ながら、日本ほど中国の水処理技術は進んでいない。もともと、汚れたものは捨ててしまえば、自然がきれいにしてくれると考えているひとが多い。かつての日本もそうだった。しかし、経済活動が進めば、自然の浄化能力はオーバーフローしてしまう。道理である。内陸で生活している人間には理解できないのだろうが。

 大量発生したクラゲは半年ほどで巨大化し、海流にのって日本海、そして対馬海峡を通って太平洋岸にも押し寄せる。迷惑を蒙っているのは日本だけであるので、国際的な関心も低い。どうしようもないのである。

 この事態を危惧したグループが、渤海湾を浄化するプロジェクトを国に提案したという。ところが役人に一蹴されたそうである。なぜ、日本の金を使って、他人の海をきれいにする必要があるのかと。

2009年10月10日土曜日

ダム建設の愚

 民主党政権になって、前原国土交通大臣がダム事業をすべて見直すと宣言した。大変な英断と思うが、彼の身が心配である。なにしろ、ダム事業は闇の利権のオンパレードである。裏社会とも密接な関係にある。甘い汁が吸えなくなる連中にとっては死活問題であろう。たとえ、非合法的な排除であっても辞さないのではないか。

 ダムをつくるには地元の理解が必要となる。土地の買収も大変だ。このため、ダム建設の予算の約10%が、裏工作に使われると言われている。4000億円の予算であれば、400億円もの金が使われることになる。ハイエナのように、この裏金に群がる連中が出てくる。

 ダム建設を役所が決めれば、とにかく建設を進めることが第一義となる。障壁はできるだけ排除しなければならない。建設推進が正義であり、すべてに優先される。反対派や土地持ちを説得するために、いくら金をかけてもいい。そんな雰囲気が蔓延する。その甘い汁に、当然政治家も群がってくる。

 みんなで寄ってたかって金をしゃぶりつくす。それがダム建設という公共事業の実態である。どうせ、金の出所は税金である。自分の懐が痛むわけではない。地元の人間、政治家、官僚、暴力団、すべてが恩恵にあずかる。そんなおいしい事業を簡単に手放すわけにはいかない。これが本音である。

 まともな考えを持った人間がいれば、ダムが治水に役立たないことは明らかであろう。最近、北朝鮮がダムに水が溜まりすぎたと、韓国に無断で放水し、人的被害が発生した。降雨量が一定以上になればダムは決壊する。治水どころか、大量の水を放流せざるをえないのである。

2009年6月8日月曜日

エコカー

 地球温暖化に対する関心が高まりを見せている。政府の補助金制度導入もあって、エコカーのひとつであるハイブリッドカーが大人気である。自動車メーカー間の競争も激化している。最近では、ライバル会社のホンダを意識したトヨタによる過激なCMが話題となった。

 ハイブリッドカーとは、化石燃料のガソリンと、巨大電池を組み合わせたものである。ガソリンで走行している間に電池に充電できるので、燃費が格段に改善できるうえ、CO2排出量も大幅に低減できる。トヨタは、自社開発車は、ホンダ車と違って、電池だけで走行できると喧伝している。

 しかし、ふと昔のことを思いだして複雑な思いにとらわれる。それは、電池が環境にやさしくないと騒がれて時代があったという事実である。確かに、電池を使っている間はCO2を排出しないが、寿命がきたら、電池は産業廃棄物となる。しかも、環境汚染物質を多く含んでいる。その処理をどうするのだろうか。さらに、電池をつくる過程で排出されるCO2のことは環境負荷としていっさい計算されていない。

 かつて、環境問題に厳しいカリフォルニア政府は、電池を積まない自動車の開発を促進していた。そのため、電池に変わるフライホイールなどの開発が活発化した時期があった。結局、便利な電池に変わる技術がないということで実現しなかったが、それが、いまでは重い巨大電池を積んだ自動車がエコカーとして重宝されている。

 さらに、重要なことは、もともと自動車は環境にやさしくないという基本を認識することである。自動車を使わずに、歩く、自転車を使う、最悪でも公共交通機関を使うという行動のほうが、エコカーを使うよりずっと環境にやさしいのである。

 燃費を考えるなら、軽自動車に乗るほうが、よほどエコである。排気量の大きいハイブリッドカーに乗って、自分はエコを考えているなどとはとても言えないはずである。

 しかし、やはり気になる。使えなくなった電池の処理は、誰が、どこで、どうするのだろうか。そして、そのコストは誰が負担するのだろうか。

2009年3月15日日曜日

かんぽの宿

 鳩山大臣が噛み付いたかんぽの宿の入札問題。一躍、郵政会社の闇をあばいたとヒーロー扱いされている鳩山さんであるが、とんだピエロという見方もある。

 かんぽの宿は、郵政省時代に、あり余った金で役人が自分達のおいしい天下り会社をつくるために設立されたものである。当然、その運営には数多くの郵政ファミリー企業が関与している。なにしろ、赤字にしても補填してくれるのだから、なんでもやり放題である。寄生虫のように、数多くの天下り企業がかんぽの宿を食い物にしてきたのだ。

 驚くのは、黒字になると補助金が出ないという理由で、わざと赤字にするという杜撰な体質である。
 今回、本物の民間企業に売却されると、これら旨みを吸っていたファミリー企業と天下った役人が締め出されてしまう。そこで、鳩山大臣をうまく利用したというわけである。

 いまや、郵政民営化に関しては、自民党も民主党も大反対の大合唱であるが、原点にもどって考える必要がある。郵貯や簡保の巨大マネーが湯水のごとく浪費されていた。それを阻止するためにとった政策が郵政民営化だったはずだ。

 特定郵便局の局長らが、使い切り費という名目のもと、領収書のいらない金を年間1000億円も自分たちの懐に入れていたことも忘れてはならない。

 民営化で、田舎のサービスが低下したとマスコミは責めるが、本質を忘れた議論である。

2009年3月14日土曜日

国策捜査

 民主党党首の小沢一郎の第一秘書がいきなり逮捕され波紋を投げかけている。驚くのは、その後のマスコミの対応である。これでもかというくらい捜査情報がリークされ、それが各紙をにぎわしている。明らかに検察側のリークである。

 実は、あまり表には出ていないが、検察、警察と民主党は戦争を続けているのである。発端は、警察と検察が行っている裏金づくりである。民主党は、国会でも積極的に追及を続けてきた。

 警察庁は否定しているが、裏金づくりは常態化していて、キャリア官僚が恩恵に預かっていたのは明らかである。実は、民主党から追求を受けて国会で答弁させられていた警察庁長官が、現在の内閣官房副長官の漆間氏なのである。自民党は、彼を官僚トップにすえることで、警察に恩を売ったのであろう。

 民主党が政権をとったら、それこそ裏金の実体が明らかとなり、検察と警察の権威が地に落ちてしまう。そして、多くの官僚が責任をとらされるであろう。必死になって政権交代を阻止しようとするのは、当たり前と言えば、当たり前のことなのである。

 それを知ってか知らずか、マスコミは何も伝えない。そういえば、裏金づくりの実体をテレビで明かす寸前に逮捕された検察官僚がいた。マスコミのトップが検察に恩を売ったのは明らかである。

 いや、マスコミ関係者には脛に傷持つ身がたくさん多いと聞く。検察や警察には、裏情報もたくさん集まる。互いに協力するのは当然かもしれない。

2009年2月5日木曜日

丸投げ

 いま公務員の天下りが問題になっている。何十年も前から指摘されながら、一向に是正される気配はない。むしろ、増えているのが現状であろう。

 安い給料で働かされても公務員が我慢できるのは、いずれおいしい天下りが待っているからだという。そのため、天下りをなくしたら、優秀な人材が公務員にならないという意見もある。

 しかし、一方で、1000兆円と言われる国の借金をつくった元凶は、天下りであることも確かである。天下るためだけにつくられた法人は数え切れないほどある。

 ある財団法人は役員が10人以上いるが、実際の事務所は狭いワンルームで、働いているひとはノンキャリ出身のただ1人というところであった。ここに国から20億円近い補助金が支出されているが、この法人は、その一割をピンはねして、あとは100%民間企業に丸投げしているのである。

 結局、ピンはねした金は役員の高額な報酬と、交際費などに消えていく。似たような法人はやまのようにある。これでは、国の借金は膨れ上がるばかりである。

 誰かが真剣になって、この悪弊をとめなければ、日本は確実に沈没してしまうだろう。利権にどっぷり浸かった自民党に、それができないことは確かであるが。

2009年2月1日日曜日

サブプライムもうひとつの陰

 アメリカで捨てられるペットが増えているという。サブプライムローンで破綻して家を手放した人たちが、ペットを置き去りにしているのだ。家族を食べさせるだけで精一杯なのだから、ペットまでは手が回らないのは当然かもしれない。

 ひどい場合には、鎖につながれたまま飢え死にしているペットもいるという。一緒につれていけない。しかし、野に放してしまうと、野生化し狂犬病などの原因になり迷惑がかかる。難しい選択だ。ペットには哀れと言うしかない。

 もともと家には番犬が必要という理由からファッションで犬を飼っていた家もあるという。はじめから愛情がない飼い主もいたようだ。

 現在、アメリカの自治体が野放しになっているペットの捕獲に動いているという。ただし、行政側でもペットを保管しておける期限は限られており、引取り手がなければ処分される運命にあるという。

 CNNで見た動物たちは、檻の中で不安げで悲しそうな目をしていた。人間の愚考がもうひとつの悲劇をつくったのである。一方で、ウォール街の金融機関で働く人間が法外なボーナスを受け取ったことが報じられ、オバマ大統領が不快感を示していた。この不幸の原因をつくった連中が反省することもなく高額な報酬を得る。懲りない面々とは彼らのことであろう。

2009年1月31日土曜日

オバマ大統領誕生に思う

 トーマスは、かつて30年以上前にアメリカのサンフランシスコ近郊の高校に通っていた。当時は珍しい高校への留学で、白人家庭にホームステイした。カリフォルニアは人種差別という点では、進歩的な地域であったが、やはり黒人差別は隠然としてあったと思う。

 高校でも、仲良くしているように見えても、黒人と白人コミュニティは自然と別れていた。例えばプールで泳ぐ黒人学生はいなかった。誰も禁じたわけではないが、暗黙の了解があったのだろう。

 ただし、花形スポーツの世界では黒人はヒーローだった。全校に占める黒人の割合は二割程度であったが、学校代表のバスケットボール、アメラグ、野球のスター選手はすべて黒人であった。テニスやゴルフの選手は皆無であったが。

 ひょんなことから、トーマスは高校の二大スターであるジョン・ボイドとアンソニー・クイーンのふたりと仲良くなった。ふたりは、バスケットとアメラグの得点王で、地元新聞をいつも飾っていた。

 ホームステイ先の妹が、ふたりに会いたいというので、自宅に連れて行ったことがある。妹ふたりは大喜びだったが、ホームステイ先のマミーがみせた表情はなんとも形容しがたいものであった。微妙な空気を悟ったふたりは、早々に帰っていった。人種差別ということを強く感じた一瞬であった。

 その後、ジョン・ボイドは地元のガソリンスタンドに勤めた。彼が差別のことでトーマスにみせた涙は一生忘れられない。アンソニー・クイーンは奨学金を得てスタンフォード大学に進みスター選手になったが、15年後に白人を殺害し、刑務所に服役中と聞いた。

 いま彼らは、どんな気持ちでオバマ大統領誕生を見つめているのだろうか。機会があれば、ふたりに会って話がしてみたい。

2009年1月5日月曜日

万能細胞特許

 ドイツの製薬会社のバイエルン社が、2007年6月に万能細胞に関する特許を日本の特許庁に申請していたことが分かった。

 作製方法だけでなく、万能細胞そのものも特許として申請されているという。ニュースでは、特許として成立する可能性が高く、今後の特許紛争が予想されるとある。

 実は、特許と研究論文は大きく異なる。研究では、自分で確かめた限定した事実しか書かないが、特許の場合には、有効と予想される内容はすべてクレームとして請求するのが常道である。

 このため、研究者が書く特許と、特許の専門家がバックについている企業が手がける特許では大きく内容が異なることが多い。専門家はすべてを特許化しようとするからである。

 京都大学の特許は、製法特許という。実は、特許の世界では製法特許は弱いというのが常識である。別な製法でものができれば回避できるからである。このため、ものそのものを特許化することが重要とされる。

 詳細は定かではないが、気になるのは、バイエルンが万能細胞そのものを特許化している点である。ただし、万能細胞の臨床応用には20年かかるという予測もあり、本当に実用化される頃には、すべての特許の期限が切れている可能性もある。

 特許紛争に振り回されるよりも、その応用研究に邁進するのが賢明なのかもしれない。

2009年1月4日日曜日

永田元議員の自殺

 堀江被告と自民党武部幹事長の息子との癒着を示すメールを入手したとして、国会で追及し、それがガセネタだったことが分かり、民主党党首の辞任と、自分自身の国会議員辞任に追い込まれた永田元議員が自殺した。

 なんとも痛ましい事件である。いまだに、彼が誰にはめられたのかが不明である。とは言え、あまりにもおそまつな対応であったことも確かである。まともな人間であれば、メールが偽造であることは簡単に見抜くことができただろう。功を焦ったのだろうか。

 彼は、東大卒で大蔵省に入ったエリート官僚だったと言われているが、少し事情が違う。出身が法学部ではなく、工学部なのである。大蔵省では法学部出身以外はキャリアとはみなされない。決してエリートではなかったのである。

 理系出身ということで、応援していたが、偽造メールに簡単にひっかかったうえ、それでも強硬姿勢を崩さず、玉砕した姿はあまりにもみじめである。理系人間は、文系人間に比べて大局観がないと言われる。それが、理系人間が日本で出世できない理由と言われてきた。

しかし、海外に目を向ければそうでないことは自明である。海外では政府や企業の中枢に理系出身の人間がつくことが多いからだ。あえていえば、日本における理工系の教育が、あまりにも視野が狭いことが背景にあると言える。いわば、専門バカをつくることがよしとされているのである。
 同じように政治家として失脚しながら、しぶとく復活してきた社民党の辻元議員のような人間もいる。永田議員には、それを期待していたのだが、外見とは違って、精神的にも脆かったのかもしれない。いまは冥福を祈るのみである。