2008年12月23日火曜日

大学の資産運用

 日本の多くの私立大学が資産運用に失敗して総額で700億円近い損失を出したことが報じられている。これは、アンケートに答えた大学のみの総計であるから、3月の決算時には、さらに損失額は膨らむのは必至と言われている。

 大学には、入学金と授業料という現金が毎年入ってくる。それを寝かせておくのは愚の骨頂であり、うまく資金を動かして、そこから利益を得るのが賢い。そう言われ出したのは、いつ頃だったろうか。

 バブル崩壊後のゼロ金利政策で、日本では銀行に預けてもほとんど利息がつかない。銀行に預ける意味がないと感じた大学は、自分達で資産運用を始めた。大学だけではない。地方自治体や公的組合でも資金のあるところは、運用に走った。

 そのための失敗も多い。アルゼンチン債が紙くずになって、虎の子の資金をゼロにした組合が社会問題になったことを覚えているひともいるだろう。その教訓は生かされなかったようだ。

 とは言っても日本だけを責められない。ハーバード大学では80億ドルの損失を出したという。なんと8000億円である。ハーバードのファンドマネージャーになることは一種のステータスであり、また、彼らが、資金運用で多大な実績を積み重ねてきたのも事実である。その超一流の専門家が失敗したのだから、日本の私立大学の火遊びを責めるのは酷であろう。

 しかし、気になるのは、巷間よく言われる「高等数学を駆使した資産運用」という言葉である。高等数学を使ったからと言って、金儲けができるわけではない。

 昔から相互作用のある3体以上の問題は、数学では厳密解を得ることができないことが知られている。太陽と地球の運動は解析できるが、月が介入したら計算不能となる。経済は、3体どころか、ものすごい数の因子が相互作用を及ぼしている。解けるわけがないのである。

2008年12月21日日曜日

日本沈没のシナリオ

 ある省庁が不況対策という大儀名文のもと、例えば、不況業種に無担保で金を貸すという制度をつくったとしよう。いくら無担保とは言っても、借金はいずれ返さなければならない。融資をまともに受けようという企業の社長は責任感があるから、返済のことをきちんと考える。

 本当に返せるのだろうか。悩んだ末、あきらめるひとも多いだろう。このため、制度を利用しようという経営者はそれほど多くはないのである。ところが、制度をつくった役人にとって、それは困ることである。

 彼らの至上命題は、予算消化である。もともと日本を良くしようという大儀ではなく、不況を利用して自分の省庁に予算を持ってくることが彼らの目的である。畢竟、なりふり構わぬ予算消化に走ることになる。それが悪用されようが、お構いなしである。

 ここに目をつけるのが、暴力団の舎弟企業である。架空の会社を立ち上げ、無担保で大金をせしめる。後は、会社をつぶしてしまえば、金を返す必要がない。結局、不況対策のための税金が闇社会に消えていく。

 選挙に勝ちたい自民党政権は、来年度、88兆円という分不相応な予算を計上した。世界的な経済危機への緊急対応というが、おそらく、対策にはならないだろう。後に残るのは、膨大な国の借金だけである。

上から目線

 麻生総理が再び非難を浴びている。何を思ったか、ふらりとハローワークに視察に出かけたのだ。そして、たまたま来ていた若者を捕まえて話を聞いた。

 彼が、何でもいいから仕事を探していると言うと、麻生総理は説教した。そんなことでは、世話するほうも困ってしまう。自分が何をしたいかを明確にせよと。

 就職相談に来た学生に対する教師のアドバイスならば、これでよいのかもしれない。しかし、このご時世である。派遣切りなどの影響で、歳を越せないひとが増えている。庶民は就職先など選んでいる余裕などないのだ。
 やはり、この総理はひどすぎる。このまま居座られたのでは、日本そのものが沈んでしまう。

2008年12月8日月曜日

がんじがらめ

 日本の地方が悲鳴を上げている。景気悪化による経済の低迷が続いているのである。このため、自民党には地方議員からの陳情が後を絶たない。公共事業を持ってきて欲しい。銀行を助けて欲しい。危篤まぎわの患者になんとかカンフル剤をという願いである。

 しかし、地方が疲弊している背景には、根本的な問題が潜んでいることを忘れてはならない。それは、本質的な問題である。

 田中角栄による「日本列島改造論」が世の歓迎をうけ、道路建設をはじめとする地方の改造に多くの税金が使われた。まさに湯水のごとくという表現が正しい。何もせずに、空から仕事が降ってくるのである。まともな仕事をしているのはばかばかしい。

 地方の人間は、農業従事者も含めて、みな土建業に進出した。農家は兼業であるが、もうけは土建から挙げる。見積もりも当然甘くなる。やりたい放題。このため、甘やかされた土建屋は大きく成長し、自民党の強固な支持団体となった。まさに、税金の搾取団体である。

 膨らんだ建設業界からは、多くの地方議員と国会議員も誕生し、圧力団体だけではなく、議員としても、税金を自分達にもってくることに奔走した。まさにやくざ世界である。この結果、日本の企業構造は大きくゆがんでしまった。

 こんなばかなことが続くわけがない。そう理屈で分かっていても、背に腹は変えられない。とにかく、無駄な税金と分かっていてもどぶに捨てるしかない。これが地方行政だ。小泉さんが、これに歯止めをかけると期待していたが、麻生ですべてが潰えた。