トーマスは、かつて30年以上前にアメリカのサンフランシスコ近郊の高校に通っていた。当時は珍しい高校への留学で、白人家庭にホームステイした。カリフォルニアは人種差別という点では、進歩的な地域であったが、やはり黒人差別は隠然としてあったと思う。
高校でも、仲良くしているように見えても、黒人と白人コミュニティは自然と別れていた。例えばプールで泳ぐ黒人学生はいなかった。誰も禁じたわけではないが、暗黙の了解があったのだろう。
ただし、花形スポーツの世界では黒人はヒーローだった。全校に占める黒人の割合は二割程度であったが、学校代表のバスケットボール、アメラグ、野球のスター選手はすべて黒人であった。テニスやゴルフの選手は皆無であったが。
ひょんなことから、トーマスは高校の二大スターであるジョン・ボイドとアンソニー・クイーンのふたりと仲良くなった。ふたりは、バスケットとアメラグの得点王で、地元新聞をいつも飾っていた。
ホームステイ先の妹が、ふたりに会いたいというので、自宅に連れて行ったことがある。妹ふたりは大喜びだったが、ホームステイ先のマミーがみせた表情はなんとも形容しがたいものであった。微妙な空気を悟ったふたりは、早々に帰っていった。人種差別ということを強く感じた一瞬であった。
その後、ジョン・ボイドは地元のガソリンスタンドに勤めた。彼が差別のことでトーマスにみせた涙は一生忘れられない。アンソニー・クイーンは奨学金を得てスタンフォード大学に進みスター選手になったが、15年後に白人を殺害し、刑務所に服役中と聞いた。
いま彼らは、どんな気持ちでオバマ大統領誕生を見つめているのだろうか。機会があれば、ふたりに会って話がしてみたい。
2009年1月31日土曜日
2009年1月5日月曜日
万能細胞特許
ドイツの製薬会社のバイエルン社が、2007年6月に万能細胞に関する特許を日本の特許庁に申請していたことが分かった。
作製方法だけでなく、万能細胞そのものも特許として申請されているという。ニュースでは、特許として成立する可能性が高く、今後の特許紛争が予想されるとある。
実は、特許と研究論文は大きく異なる。研究では、自分で確かめた限定した事実しか書かないが、特許の場合には、有効と予想される内容はすべてクレームとして請求するのが常道である。
このため、研究者が書く特許と、特許の専門家がバックについている企業が手がける特許では大きく内容が異なることが多い。専門家はすべてを特許化しようとするからである。
京都大学の特許は、製法特許という。実は、特許の世界では製法特許は弱いというのが常識である。別な製法でものができれば回避できるからである。このため、ものそのものを特許化することが重要とされる。
詳細は定かではないが、気になるのは、バイエルンが万能細胞そのものを特許化している点である。ただし、万能細胞の臨床応用には20年かかるという予測もあり、本当に実用化される頃には、すべての特許の期限が切れている可能性もある。
特許紛争に振り回されるよりも、その応用研究に邁進するのが賢明なのかもしれない。
作製方法だけでなく、万能細胞そのものも特許として申請されているという。ニュースでは、特許として成立する可能性が高く、今後の特許紛争が予想されるとある。
実は、特許と研究論文は大きく異なる。研究では、自分で確かめた限定した事実しか書かないが、特許の場合には、有効と予想される内容はすべてクレームとして請求するのが常道である。
このため、研究者が書く特許と、特許の専門家がバックについている企業が手がける特許では大きく内容が異なることが多い。専門家はすべてを特許化しようとするからである。
京都大学の特許は、製法特許という。実は、特許の世界では製法特許は弱いというのが常識である。別な製法でものができれば回避できるからである。このため、ものそのものを特許化することが重要とされる。
詳細は定かではないが、気になるのは、バイエルンが万能細胞そのものを特許化している点である。ただし、万能細胞の臨床応用には20年かかるという予測もあり、本当に実用化される頃には、すべての特許の期限が切れている可能性もある。
特許紛争に振り回されるよりも、その応用研究に邁進するのが賢明なのかもしれない。
2009年1月4日日曜日
永田元議員の自殺
堀江被告と自民党武部幹事長の息子との癒着を示すメールを入手したとして、国会で追及し、それがガセネタだったことが分かり、民主党党首の辞任と、自分自身の国会議員辞任に追い込まれた永田元議員が自殺した。
なんとも痛ましい事件である。いまだに、彼が誰にはめられたのかが不明である。とは言え、あまりにもおそまつな対応であったことも確かである。まともな人間であれば、メールが偽造であることは簡単に見抜くことができただろう。功を焦ったのだろうか。
彼は、東大卒で大蔵省に入ったエリート官僚だったと言われているが、少し事情が違う。出身が法学部ではなく、工学部なのである。大蔵省では法学部出身以外はキャリアとはみなされない。決してエリートではなかったのである。
理系出身ということで、応援していたが、偽造メールに簡単にひっかかったうえ、それでも強硬姿勢を崩さず、玉砕した姿はあまりにもみじめである。理系人間は、文系人間に比べて大局観がないと言われる。それが、理系人間が日本で出世できない理由と言われてきた。
しかし、海外に目を向ければそうでないことは自明である。海外では政府や企業の中枢に理系出身の人間がつくことが多いからだ。あえていえば、日本における理工系の教育が、あまりにも視野が狭いことが背景にあると言える。いわば、専門バカをつくることがよしとされているのである。
同じように政治家として失脚しながら、しぶとく復活してきた社民党の辻元議員のような人間もいる。永田議員には、それを期待していたのだが、外見とは違って、精神的にも脆かったのかもしれない。いまは冥福を祈るのみである。
なんとも痛ましい事件である。いまだに、彼が誰にはめられたのかが不明である。とは言え、あまりにもおそまつな対応であったことも確かである。まともな人間であれば、メールが偽造であることは簡単に見抜くことができただろう。功を焦ったのだろうか。
彼は、東大卒で大蔵省に入ったエリート官僚だったと言われているが、少し事情が違う。出身が法学部ではなく、工学部なのである。大蔵省では法学部出身以外はキャリアとはみなされない。決してエリートではなかったのである。
理系出身ということで、応援していたが、偽造メールに簡単にひっかかったうえ、それでも強硬姿勢を崩さず、玉砕した姿はあまりにもみじめである。理系人間は、文系人間に比べて大局観がないと言われる。それが、理系人間が日本で出世できない理由と言われてきた。
しかし、海外に目を向ければそうでないことは自明である。海外では政府や企業の中枢に理系出身の人間がつくことが多いからだ。あえていえば、日本における理工系の教育が、あまりにも視野が狭いことが背景にあると言える。いわば、専門バカをつくることがよしとされているのである。
同じように政治家として失脚しながら、しぶとく復活してきた社民党の辻元議員のような人間もいる。永田議員には、それを期待していたのだが、外見とは違って、精神的にも脆かったのかもしれない。いまは冥福を祈るのみである。
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