2009年1月31日土曜日

オバマ大統領誕生に思う

 トーマスは、かつて30年以上前にアメリカのサンフランシスコ近郊の高校に通っていた。当時は珍しい高校への留学で、白人家庭にホームステイした。カリフォルニアは人種差別という点では、進歩的な地域であったが、やはり黒人差別は隠然としてあったと思う。

 高校でも、仲良くしているように見えても、黒人と白人コミュニティは自然と別れていた。例えばプールで泳ぐ黒人学生はいなかった。誰も禁じたわけではないが、暗黙の了解があったのだろう。

 ただし、花形スポーツの世界では黒人はヒーローだった。全校に占める黒人の割合は二割程度であったが、学校代表のバスケットボール、アメラグ、野球のスター選手はすべて黒人であった。テニスやゴルフの選手は皆無であったが。

 ひょんなことから、トーマスは高校の二大スターであるジョン・ボイドとアンソニー・クイーンのふたりと仲良くなった。ふたりは、バスケットとアメラグの得点王で、地元新聞をいつも飾っていた。

 ホームステイ先の妹が、ふたりに会いたいというので、自宅に連れて行ったことがある。妹ふたりは大喜びだったが、ホームステイ先のマミーがみせた表情はなんとも形容しがたいものであった。微妙な空気を悟ったふたりは、早々に帰っていった。人種差別ということを強く感じた一瞬であった。

 その後、ジョン・ボイドは地元のガソリンスタンドに勤めた。彼が差別のことでトーマスにみせた涙は一生忘れられない。アンソニー・クイーンは奨学金を得てスタンフォード大学に進みスター選手になったが、15年後に白人を殺害し、刑務所に服役中と聞いた。

 いま彼らは、どんな気持ちでオバマ大統領誕生を見つめているのだろうか。機会があれば、ふたりに会って話がしてみたい。

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