2007年12月16日日曜日

今年の漢字「偽」

 今年の漢字は「偽」に決まった。日本漢字能力検定協会が、その年の世相を表す漢字一字を公募で集め、一番票を集めたものを「漢字の日」の12月12日に発表している。

 偽が選ばれたのは、今年、発覚した食品偽装によるものだろう。第二位が「食」第三位が「嘘」であったことからも明らかである。

 ところで、偽という字は「にんべん」に「為(ため)」と書く。よって、人のために何かをすることが「いつわり」になると、皮肉な解釈しているひとも多い。面白い解釈ではあるが、これは正しくはない。それに、食品偽装は「ひとのため」ではなく「自分のため」あるいは「経営者のため」に行われたものである。
 
 「為」は「為す(なす)」とも読む。つまり「偽」は「人為」つまり「人が為すこと」という意味である。実は、「為」は、もともとは象使いが象を手なづける(手+象)の会意文字である。そのことから。「偽」は「ひとが手を加えて本来の性質や姿を変える」という意味になったという。これが「偽(いつわり)」の字源である。

 ところで、「偽」が今年の漢字に選ばれたが、忘れてならないのは、今年発覚した偽装は何十年も前から延々と続けられてきたという事実である。食品だけではない。耐震偽装や年金問題、薬害肝炎、防衛庁スキャンダルなどの官庁の不祥事もすべてそうである。

 あえていえば、ここ何十年の日本社会の世相を漢字一字であらわせば「偽」となるということであろう。

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