インターネットや電子メールの進展には、目をみはるものがある。一昔前であれば、海外に出かけていかなければもらえなかった情報が瞬時にして手に入る。そのかわり、原稿の締め切りをごまかせなくなったという弊害もある。「とっくに出したんだが、郵便事情が悪くて、原稿が届いていないようだ」などという言い訳はもはや通用しない。
ところで電子メールの発達で、多くの日本人がさぎにあっているのも事実だ。だまされるほうが、どうかしているというものが多いが、人間の心理をついた功名なものもある。いくつか紹介しよう。
まず、買ってもいない宝くじに当選したというあきらかに怪しげなものがある。いきなり、仰々しく“CONGRATULATIONS!!!”とあり、内容をみると「あなたは1000万円のくじに当選した」と書いてある。くじを買ってもないのに不思議に思っていると、これは世界で登録されているメールアドレスをもとに、その会社が勝手に当選者を選んだというのだ。
その理由についてはいろいろ書かれているが、たとえば、「新しくインターネットで宝くじを購入する会社を立ち上げたので、その広報のために、記念イベントとして世界を相手に無料の宝くじを行っている」などと説明が書いてある。いかにもあやしげだが、どうやら、こんなみえみえの詐欺にひっかかる日本人が多いらしい。
「2週間以内に返信しないと、あなたの当選権は失われる」などと書かれていると、ついつい返信してしまう。そして、「金を振り込みたいので教えてほしい」などと言われて、相手のいうがままに自分の銀行口座などの情報を与えてしまう。気づくと、身ぐるみはがされてしまっているという寸法である。
もっと長文の詐欺メールもある。だいだい、差出人の国は政情不安なアフリカや南米の国である。
「わたしは、いま政情が不安定なアフリカの○○という国にいる。事業で大変な大金持ちとなったが、国の指導者が変わると、資産を凍結されてしまう虞れがある。そこで、日本の銀行を通して、資産を安心して預けられる国に送金したい」
そして、本人の資産として100億円などという途方もない金額が書かれている。ものすごい金額であるが、海外には、この程度の金を持っている人間は結構いるだろう。そしてメールは続く。
「そのために、信頼できるあなたの銀行口座を中継口座として利用させていただきたい。謝礼として送金総額の3%を支払う」
というものである。「信頼できる」という情報をどうやって入手したかは疑問が残るが、いろいろな人名録などをもとにメールを送っているようなので、受け取った人間は、少し優越感を覚えるかもしれない。
「送金総額の3%?」これは、少ないように感じるが、金額にすればなんと3億円である。ただ、口座を一瞬貸すだけで、これだけの金が入るのだ。こんなおいしい話はない。
ただし、ほとんどのひとは「そんなうまい話があるわけがない」と思って詐欺のにおいをかぎつける。しかし、なかには「口座を貸すだけなら自分は損しないだろう」と思ってしまう人も居る。そして、自分の口座番号を教えてしまい、そのすべてを引き出されてしまうのである。
もちろん「新しい口座を開けばいいだろう」と考えて、現金のほとんど入っていない口座をつくるひともいる。これならば被害にあわないというわけである。賢い方法と褒めてあげたいが、先方も一筋縄ではいかない。海千山千の詐欺師である。
いろいろとやり取りがあったあと、いざ振り込むという段になる。
「いまから100億円の金を振り込む」という連絡がくる。金はいったん、日本の口座に入ったあと、3%の金だけ残して、残りは自動的に海外に送金されるという。むろん依存はない。当然、その手続きも承諾もすることになる。
しかし、いくら待っても送金がない。「どうしたんだろう」といらいらして待っていると、口座の残高が少なすぎて送金を拒否されたという連絡がくる。「少なくとも300万円の残高がないと送れない。至急、口座に金を入れて欲しい」という依頼だ。
ここで、踏みとどまれば、詐欺にはあわないのであるが、緊急である。自分の口座から金を下ろして、あわてて振り込む。これで「3億円が自分のものになる」という期待で胸を膨らまして。
しかし、それ以降はなぜか連絡が途絶えてしまう。不思議に思って、翌日、銀行口座を確認しにいくと、空になっている。見事300万円は消えている。銀行に文句をいっても始まらない。何しろ、海外送金を承諾しているのだ。
この手の詐欺のパターンは同じである。何とか、口座番号を聞き出すことと、そして口座に、ある程度の預金をさせておくことである。
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