統計学によれば、標本数が30個以上あれば、その分布は正規分布と呼ばれる分布に従うことが知られている。
正規分布というのは、もともとは誤差の分布のことである。例えば、30人のクラスの生徒に、10cmの長さに紙を切りなさいと命じる。すると、ぴったり10cmというひとは少なく、長かったり、短かったりする。この時、10cmからの誤差をグラフにすると、誤差0cmを中心にして、つり鐘型の分布となる。これが、ごく当たり前の分布ということで英語ではnormal distributionと呼ぶ。normalつまり、ごく普通の分布という訳である。日本語では、normalという英語を仰々しく「正規」と訳してしまった。
この分布は、いろいろなものに当てはまる。例えば、医者の技量の分布である。30人以上医者がいれば、この分布になる。簡単のために100人としよう。すると、いわゆる可もなく不可もなくというところが60人程度いる。一方、優れた名医と呼ばれるひとは5人くらいしかいない。同様に、どうしようもないひどい医者も5人いることになる。のこりの30人のうち、15人はどちらかというと医者として相応しいひと、15人は相応しくないひとということになる。
運悪くひどい医者にあたったひとには気の毒というほかない。しかし、医者の場合はなんとかなる。なにしろ、人間の病気に対する自然治癒能力は85%以上とされている。つまり、何も処方しなければ、病気は治るのである。風邪の患者に栄養剤でも注射しておけば、医者の誤診もないし、患者もハッピーである。
しかし、こううまくいかない世界もある。例えば大学だ。放って置けば学生が勝手に勉強するということにはならない。(昔の大学はそうであったが)。大学教授の場合も、100人いれば、5人は教授として立派なひとということになる。つぎの15人をあわせると、合格点があげられるのは20人程度しかいない。残りの80人は、できれば自分のゼミの指導教員にはなって欲しくないひとということになる。世の中は、運の悪い学生であふれているのだ。
さらに具合が悪いことに、大学の方針は教授会が決めることになっている。多数決の原理からいえば、大学教授としてふさわしくない人間が方針を決定することになる。けだし、よい方向に大学改革が進むはずがないのである。
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