2007年9月15日土曜日

天下り

公務員を辞めた後に、関連の団体や企業に再就職し、数年務めただけで大枚の退職金をもらって、つぎの組織に移っていく。ひとによっては数億円の退職金をせしめるものもいる。一般の庶民からはとても許せない(というよりは、うらやましい)所業、これが天下りである。

 これに対し、当事者の官僚たちは、天下りは当然のことと思っているようだ。自分たちは庶民よりもはるかに優秀なのに、安い給料でこきつかわれてきた。キャリアの最後に、ごほうびが待っているのは当然であろう。これが、彼らの主張である。

さらに、おいしい天下りという制度がなくなれば、優秀な人間は誰も官僚にはならないという脅しともとれる言辞を弄する。そういう使命感のない人は官僚になって欲しくないのだが、どうやら国のために働くという感覚は彼らにはないらしい。

天下りに関する問題はいろいろあるが、官僚が天下りのためだけの組織をつくり、そこに税金から巨額の補助金が不必要に流れていることがまず大問題である。中には、常勤がひとりしかいないにも関わらず何億円という補助金をもらい、天下りを十人以上も雇っている公益法人もある。公益という枕詞がむなしく響く。

おそらく不必要な法人をつぶすだけで、国の借金はかなり減るだろう。ある法人(石油関係)に出向した銀行員は驚く場面を目にしたという。そこの金庫には、現金がうなっていて、役所からの出向者が現金の束をつかんで夜の街に流れていくというのである。ある時など、国会議員がやってきて金の無心をしていったという。

 さらに、まともな事業をやっている団体にも天下りが来て、組織の運営を撹乱している。「小人閑居して不善をなす」という俚諺があるが、天下りは、まさにその通りのことをしている。

これは、ある公益法人の話である。新任の常務理事が、突然、昼休みに職場を回りだした。何をするかと思ったら、電気を消してまわって歩くのである。職員が仕事をしていようがお構いなしである。職員は驚いたようだが、このばか常務は得意気だったらしい。

実は、電気料金の節約をとなえているのだ。「国民の大切な税金を補助金として受け取っている組織としては当然のことである」というのが彼の主張であった。しかし、昼休みとはいえ、職員は仕事をしているのである。暇をもてあましている天下り君とは違うのだ。

それに、そんなケチくさいことをするよりも、役立たずの天下りをやめさせた方がはるかに金は浮くし、効率的である。何しろ、年に1500万円以上の給料をさらっていくのだ。しかも、退職金もばかにならない。

 ところで、天下りの退職金が高いのにはからくりがある。普通の民間人は、退職金は就労年数を基準にして退職金を算出する。つまり
退職金 = 最終月の給料 × 就労年数
となるが、天下りの役員は就労月数を基準にする。よって
退職金 = 最終月の給料 × 就労月数
という計算式となる。2年いただけで、普通の従業員が24年間働いたのと同じ額の退職金を手にするのだ。しかも、お手盛りで、最終月の給料を勝手に上げてしまう。昼休みに電気を消して回ったばかなど、退職直前に自分の給料を10万円も増やしたらしい。それだけで退職金は240万円のアップである。
 
実は、この常務に、あまりにも給料が安いので何とかして欲しいと直訴した嘱託の女性がいた。すると天下り君は「辞めたければ辞めてくれ。あなたのかわりはいくらでもいる」と言ったそうだ。かわいそうに、彼女の年収はわずか180万円程度であった。正直のところ、この女性こそが、組織にとっては不可欠の存在であり、天下りの常務など、いくらでもかわりがいる。いや、かわりという言い方には語弊がある。不必要というのが正しい。まあ、それが分かる人間ならば、若くして天下りなどさせられないのだろう。

しかも、この天下り君は「おれの女になってくれれば、給料を上げてやってもいいよ」と言ったらしい。あきれた彼女は、即刻、辞表を出したそうだ。ところが、それを不快に思った常務は、彼女のつぎの職場に電話をかけて「あの女はトラブルメーカーだからクビにしろ」と言ったらしい。世も末である。

 役所から天下ってくる連中は、役所では使いものにならないという烙印を押されたものたちである。だから、人間的にも最低であるし、仕事をさせてもまともにできるものなどいない。それが組織の長としてやってくるのであるから、職員の士気は下がる一方である。
 
 おそらく、天下り制度を廃止したら、国の借金はいっきに減るだろう。しかし、それを強行しようとした総理大臣は失脚させられた。どうやら、多くの国民は天下り制度を是としているようだ。

もうすぐ、国民ひとりあたりの借金は1000万円になる。生まれたばかりの赤ん坊がいきなり大きな借金をかかえているのだ。それが日本である。

注) 実は、地方の借金や、独立行政法人などが抱えている表に出ていない借金をあわせると、すでに国民ひとりあたりの金額は1500万円を超えているという情報もある。

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