今年もドラフト会議が開かれる。この季節、思い出すのは30年以上も前のドラフトである。当時、高校球児で怪物と呼ばれた江川卓をどこの球団が獲得するかで大騒ぎになっていた。江川は巨人以外であればプロには行かないと宣言し、結果として法政大学に進学した。
そして、四年後、ふたたびドラフト会議に臨んだ江川は、巨人以外の球団には入らないと公言した。ところが、巨人の単独指名と誰もが思っていたところに、弱小球団の近鉄が一位指名し、さらに交渉権を獲得してしまったのである。
江川の選択肢は限られている。すでに大学を卒業してしまった。ノンプロに行くか、我慢して近鉄に入団するか。しかし、江川がとった行動は意外なものだった。南カリフォルニア大学への留学を決断したのだ。一年留年して、巨人の指名を待ったのである。
しかし、江川の情熱は通じなかった。一年後のドラフト会議でなんと阪神が江川との交渉権を獲得したのである。そして、問題のトレード劇が起こる。当時、巨人のエースとして活躍してた小林が、なんと阪神江川と電撃トレードされるのである。
めでたく、江川は巨人に入団したが、面白くないのは小林である。当時は、エースとして堂々の活躍をしていた。それが、新人の江川を獲得するために、球団から捨てられてしまったのである。
この後、大卒や社会人には逆指名が許されるようになった。しかし、巨人と江川にはダーティーというイメージがつきまとうことになる。不世出の大投手も、最後は200勝もできずに退団した。
南カリフォルニア大学のグランドでぶでぶに太った江川を見たとき、これではダメだと思ったが、やはり、高校時代の神がかった投球は、その後、見ることはできなかった。おそらく、スリムだった高校時代の球速がいちばん速かったのではないかと言われている。
才能あるひとりの選手の運命を翻弄したドラフト会議。いまであったら、もしかしたら、江川は高校卒業直後に大リーグという選択もあったのかもしれない。
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