2007年10月12日金曜日

スリーナイン

ある研究所の話である。この研究所は官民共同で設立されたもので、新しい試みということで、発足当初はかなりの脚光をあびてマスコミでも大きく取り上げられた。

 官民共同ということは、当然、官庁からの天下りもあり、企業からの天下りもある。いずれ、旧組織では使い物にならないという烙印を押された連中がやってくる。やっかいばらいで、送られてきた半人前なのだ。

 この研究所にT自動車から財務部長が出向してきた。もちろん、T自動車にとっては、やっかいばらいの積もりであったのだろう。ところが、往々にして、こういう連中は勘違いする。何もしなければいいものをはりきって仕事をする。

 出向から一年後、この部長は所長表彰を受ける。研究費の大幅削減に成功した功績である。ところが、この一年間、この研究所では奇妙な現象が起き続ける。それまで世界に誇れるような成果を出してきたのが、突然、研究が停滞してしまったのだ。

 答えは簡単である。この財務部長が研究員に無断で、使用している金属の純度を99.999%から99.9%に変えてしまったのである。もちろん、金属の価格はとてつもなく安くなる。部長は同じ金属だから安いほうがいいと勝手に判断したのだ。

99.999%は9が5個ならぶのでファイブナインという。これは宝物である。しかし、99.9%つまりスリーナインの金属には、どんな不純物が入っているかわからない。当然、不純物は実験結果に悪影響を与える。系統的な実験結果はえられない。

これには、若い研究員たちが怒った。そして、ひとりがT自動車の人事に文句を言いにいった。あの部長はなんだと。結局、この研究員のほうがクビになった。

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