黒川紀章という名前を聞くと、どんな印象を持つだろうか。丹下健三の弟子で、世界的に有名な建築家。「世界中の建築家は自分のまねをしている」と豪語する不遜な自信家。そして、有名女優の若尾文子と結婚した男。そんな程度のイメージであったろうか。
それが驚くことに、都知事選に立候補を表明した。しかも、奇行と耳を疑う発言の数々。このひとは気がふれたのではと疑ったひとも多かったろう。
石原都知事が演説している横で、ハンドマイクを持ちながら、石原裕次郎の「銀座の恋の物語」をオンチそのものの声で歌っているところなど、下手な喜劇よりも、はるかに面白かった。意図は全然理解できなかったが。
そして、みごとな落選。話題には上ったが、票にはまったく結びつかなかった。これで退散するかと思ったら、なんと、参議院議員選挙に再び登場した。しかも、奥さんの若尾文子さんをともない、共生新党という政党までつくってしまった。これにも唖然とさせられた。
選挙カーも独特である。あれが、世界的な建築家のデザインかと思わず笑ったひとも多かったろう。そして、これまた見事に落選。
この一年で、黒川紀章という天才建築家に対する世間の見方が大きく変わったのは確かだろう。さらに驚いたことに、あっという間に亡くなってしまった。あまりの早わざに声も出ない。
そして「自分はいい妻ではなかった」という若尾文子に「本当に好きだったから」とさらっと言えるスマートさ。やはり凡人には天才は分からない。
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