2007年10月2日火曜日

MRI有罪判決

MRIという装置をご存知だろうか。Magnetic resonance imagerの略で、解剖せずに人体内部を観察できる装置ある。一台一億円以上と高価であるが、解像度がすぐれているため、病院は競うように導入している。

この装置は、磁場強度が大きいほど感度がいいため、磁場源として超伝導マグネットが使われる。残念ながら、超伝導を利用するためには極低温まで冷やさなければならない。

いまのMRI装置は液体ヘリウムを冷媒として使っている。その沸点はわずか絶対温度で4度である。氷点下296度という低温である。こんな低温を保持するのは並大抵ではない。

ところで、液体ヘリウムは、絶対温度4度よりも高くなると気体になる。まわりの温度が高ければ、いっきにガス化する。ご存知のように、液体が気体になれば体積はいっきに何百倍になる。

その圧力は生半可ではない。金属の容器さえ突き破る。だから、安全策はいろいろととられている。このガス化が原因で、MRI装置が爆発し、8名の病院関係者がけがをした事故があった。テレビでも大きく報道されたので知っている方もいるだろう。

実は、この事故で、この装置の管理をまかされていた技術者が告訴されたのである。一審では無罪であったが、控訴審で有罪となった。いわく、専門の技術者であれば、知識が十分あったはずであるという判決理由である。

今回の例に限らず、裁判に科学知識が要求されるケースが増えている。しかし、経験者として言わせてもらえば、どんなに熟練者であっても、すべてのケアをすることはできない。

一度、検察官と裁判官に液体ヘリウムを取り扱わせれば、どれほど大変かとうことを実感するのであろうが、それは残念ながらできない。しかし、弁護士は何をやっていたのだろうか。そうか、弁護士も理系オンチであった。
有罪となった技術者には、お気の毒と言うしかない。

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