伊勢志摩観光のおみやげは赤福というのが定番だった。本拠地は伊勢神宮のある三重県であるが、その勢力は名古屋など広い範囲に及んだ。
その老舗が、偽装したというから驚きである。
最初は、工場が比較的暇な時期に、作りだめしたり、余ったりした商品を冷凍し、繁忙期の年末年始に解凍して売り出すと言い訳していた。この程度ならば、許せるかなと思っていたが、実際はそうではなかった。
何と、売れ残った商品をそのまま包装し直しただけの「まき直し」を、よく売れる販売店へ、朝早い便で出荷していたというのだ。これは、完全に偽装である。しかも、この偽装工作は30年も前から行われていたという。空いた口がふさがらない。
しかし、こんなやり方では、古い偽装品と新品の区別がつかなくなるのではと考えていたら、ちゃんと対策がとられていたのである。
まき直しは「謹製」の日付の部分に印字した「・」(ピリオド)で目印をつけて、担当者が見分けがつくようにしていたという。これならば、古い商品をまき直しする心配はない。感心するやら、あきれるやら。会社ぐるみの偽装だったというわけである。
ところで、赤福だけではなく、最近、食品会社の不正が明るみに出ている。これに対して、社会全体のモラル低下を原因と指摘するむきもあるが、赤福は30年も前から偽装をしていたのである。いまに始まったことではないのだ。
あえて言えば、不正が明るみに出るようになったのは、公益通報者保護法が成立したことと関係があるのかもしれない。内部告発者が、法で守られるようになったのだ。
ただし、いまだに、日本には内部告発者を非難する風土がある。警察や検察の裏金を内部告発した人間が組織から疎まれ、罪を犯した連中は責任をとらずに出世している。
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