2007年10月29日月曜日

緑のオーナー制度

 申し訳ないが、最初から胡散臭いと感じていた。林野庁が昭和61年から平成10年まで募集した「緑のオーナー制度」である。いま、投資家のすべてが元本割れにあえいでいる。国は損失補てんしないことを決定した。当たり前だろう。

 しかし、言いたいのは、どうして、こんなみえすいた嘘にだまされたのかということである。あるいは、詐欺と知っていて、日本の森林を守るためにボランティアとして金を投資したということであろうか。それならば、損を覚悟で投資したということであろうから、文句は言えまい。

 緑のオーナー制度は「人工造林地の保育や管理について、広く都市に住む人々の参加を求め、森林のもつさまざまな優れた機能の維持増進を図ろうとするものである」という意図で、林野庁傘下の森林整備法人が、主に杉林のオーナーを募集したものである。トーマスのもとにもさかんにパンフレットが郵送されてきた。

「森林所有者から植栽後、ある程度の年数を経て生育途中にある人工林の提供を得る一方、緑のオーナーとなることを希望する都市住民等にその造林地における過去の投資相当額と今後の所要経費の負担を求める」というのが趣旨である。日本語からは、裏に隠れている意図が分からない。要は、木のオーナーになって金を払えということだろう。

「森林所有者、費用負担者及び育林者の三者は分収育林契約を締結し、相互に協力してこの造林地が立派にできあがるように努めるとともに伐採時にその収益を一定の割合で分配する」となっている。あたかも、オーナーには収益の分配があるような印象を与えるが、当時から難しいことは多くのひとが知っていた。

 林野庁の失策による被害はこれだけではない。雑木林を伐採して杉林を増やした。ひとの通れない山奥に驚くような贅沢な林道をつくり、国の借金を増やした。台風がくれば、ダムは杉の木であふれている。保水力のない杉は、大雨がくればいっきに流されるからだ。結局、税金は自然破壊に使われたことになる。

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