岩手県にかつて沢内村という村があった。いまは市町村合併で西和賀町となっている。この村は、日本ではじめて老人医療費を無料にしたことで知られる。中学校の社会の時間の課題で調べたことがあるのでよく覚えている。
沢内村は1960年に65歳以上の医療費を無料化、翌年には60歳以上に拡大した。当事調べていて、不思議に思ったのは、無料化後に村の医療費が減ったという事実である。
そんなばかなことがあるのだろうかと疑問に思った。しかし、理由を聞いてなるほどと思った。無料化になったことで老人が気軽に病院に行けるようになったからだという。その結果、大病になるまえの治療が可能となり、医療費が逆に減ったというのである。
まさに逆転の発想である。非常に感心したことを覚えている。こんないい制度は日本全国に広めるべきだと中学生ながら思った。調べると、沢内村にならって、1969年に東京都と秋田県が老人医療費の無料化に踏み切ったことを知った。その後、老人医療費無料化は全国に広がったという。
なぜ、こんなことを思い出したかというと、2007年版厚生労働白書が特集としてまとめた「老人医療費の無料化の歴史」が最近ニュースで話題になったからだ。なんと、この白書ではパイオニアの沢内村のことをまったく無視しているらしい。これに、旧沢内村村長(現西和賀町長)が苦言を呈したというのだ。当然であろう。
これに対し、厚労省保険局老人医療企画室は「都道府県段階の無料化を取り上げたまでで、沢内村を否定したものではない。間違いではない」と開き直っているらしい。まさにお役所仕事の面目躍如である。しかも、例によって誤りを認めない。
エイズ薬害問題、C型肝炎問題、年金問題。どれをみても、厚労省の体質は変わらないようだ。
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